企画物

□世界を終わらせたかったのは誰か
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ワイルドバッチと呼ばれる犯罪者集団がいるリニアでキリトはジンとユウヤの前に立ち塞がった。
「お前達に聞きたいことがある」
キリトは唐突にそう言った。彼が戦うことに執着していることをなんとなく察していたユウヤは首を傾げるが口には出さない。ジンが苛立ったように唸る。
「邪魔をする気か」
「山野バン」
その一言の効果は絶大で、一瞬でジンから不機嫌さが消える。
ジンがワイルドバッチを許せない理由の根本にいるのが山野バンであるから他ならない。バンがなによりも愛したLBXで罪を犯すことがバンを侮辱しているとしか思えないジンはワイルドバッチを許せない。それを言い当てられたようでそこにあるのは驚愕だけだ。
「………用件を簡潔に」
ジンにとって最大の譲歩であるこの言葉にキリトは呆れたように溜息を吐いた。
「彼の居場所が知りたいんだ。同じアルテミスファイナリストなら知っているかと思ってね」
「…………なに?」
「いくら調べても途中で消息が途切れるんだ。彼と戦いたい。前回のアルテミス優勝者とさ!」
ユウヤはその言葉に顔を曇らせ、それとは対照的にジンは小馬鹿にするように笑った。
「愚かだな、風摩キリト」
「なんだと?」
「お前がバン君のもとに辿り着けるはずがない」
「どういう意味だ」
「そのままの意味だ。僕やユウヤを倒せないのに、僕らより強いバン君に会おうなんて随分と図々しい」
「………」
「お前はバン君に一生辿り着けないんだ」
「…………じゃあ、今ここでお前達を倒せば、教えてくれるって?」
「会っても意味なんてないだろう。どうせお前はバン君に勝てないんだから」
彼に勝てるわけがない。と言う言葉に、しかしキリトは激昂するでもなく少し悩む仕草をする。
「………山野バンには誰も勝てないと?」
「そうだ」
今度はキリトが嘲笑する。
「誇張するのも大概にした方がいい」
「嘘だと思うならばそれでも僕は構わない」
「たとえ山野バンでも勝てない存在を俺は知っている」
「………いるはずがない」
「いいや、いる。最強の名を欲しいがままにしている存在が」
ジンが黙っていると興味がなくなったのかキリトは二人に背を向けた。
「レックスと呼ばれている男だ。あいつに勝つために山野バンを探していた」
後半の言葉をジンは聞いていなかった。ただキリトの言葉が反復される。
「ジン君?」
「レックスだって?」
それは去年バンが倒した世界の反乱者の名前ではないか。
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