□平和に笑みを零して
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電車に身を揺られて降りた先はアキハバラ。
バンは誰よりも先に走り出し、駅のホームを出た。
「バン!」
悲鳴に近い声はアミのもので、バンが足を止める。振り向いた先には心配そうな顔のアミや困ったように笑うジン。少しばかり焦っているカズと郷田に、呆れている仙道がいる。
「なに?」
「あんまり先に行かないで」
駆け寄ってきたアミがバンの手を取る。
「大丈夫だよ、模型店に行くだけなんだから」
「そういってこの街歩くたびに路地裏に入るのはどこの誰だい、この方向音痴」
呆れた顔をする仙道が軽くバンの頭を叩く。
「アキハバラ来るたびにすぐに曲がってすぐに絡まれてるお前に信用があると思ってるのかねぇ」
「す、すぐにって…!でも俺はいつもLBXで撃退してるだろ!」
「そうだね。君は絡まれるたびに僕らに『みんな後ろに!』と言っては一人で三体のLBXを相手しているよ」
苦笑を引っ込めて困っていると全面に出しながらジンはこほん、と咳払いをした。
「最初の内はなんてかっこいいんだバン君、やっぱり君は素敵だよ。惚れ直しちゃうよ、僕のバン君。と思っていたけれどね」
「待て、お前なんかいろいろおかしいぞ。僕のバン君ってなんだ、気持ち悪い」
顔を引き攣らせながらカズが言ったがジンはそれを無視した。
「でもやはり君一人で戦うのは心配になるよ」
「でも自分でなんとかする分にはみんなに迷惑かけてないよな」
「だな。確かにそれは一理ある。バンが正しい」
郷田が何度も頷きながら言うとバンが嬉しそうに笑った。
「だよな!」
「だがしかし、だ!…みんなに心配かけてる時点で迷惑自体はかけてるってことも自覚しろ!」
「えぇー……」
しゅんと頭を垂れるバンの姿に絆されそうになりつつ、アミはぐっと顔に力を入れた。このままだと許してしまいそうだ。横目に見れば他のメンバーも同じ葛藤を抱えているらしい。
「とにかくバン!頼むからアキハバラを一人で走り出さないで。私達と一緒に歩けば良いでしょう?」
「で、でも、楽しくて…。つい……」
「気持ちはわかるけど毎回いつの間にか路地裏に行くのは心配になるわ」
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