□離れられない離れたくない
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「結局僕は君から離れられないんだ」
ぎしり、とベッドのスプリングが軋む音がした。自分を見下ろすジンを見上げながらバンは投げ掛けられた言葉について考える。
押し倒されてもバンが冷静であることにジンが軽く眉を上げた。
「ジンは、俺から離れたいのか?」
「……きっと、それを望んで僕は留学したんだろう」
そっと頬を撫でられてバンは思わず目を閉じる。
「俺は、ジンがLBXやめないなら大丈夫だよ」
ジンの手が止まった。
「…なにがだい?」
「ジンがLBXを続けているなら、俺達は繋がっているから。たとえジンが俺から離れて行ったって、どこかの大会で戦うことがあるかもしれないだろ。俺はそうやっていつか会えることを信じてられる。だから俺は大丈夫なんだ」
「……そうかい」
ぎし、とまた音がした。肘でバンの腕を押さえるようにして、両手でバンの顔を包み込んだ。
「君にとって僕の価値は、所詮LBXに過ぎないんだね。今も昔も」
「ジン?…腕、痛いんだけど……」
「君にとって僕は戦えればそれで良いんだろう。僕があのままイノベーターにいたって君は変わらない」
「俺はジンが仲間になってくれて嬉しいよ!」
肘に押さえ付けられた腕が痛い。なんとかジンの下から抜け出そうと身体を捩じらせたが意味はなかった。
「嬉しいよ!ジンがいないと勝てない場面もいっぱいあった」
「そうだね。君の判断基準はいつもLBXだ。君がLBXを愛していることはわかってるけど……。妬けるよ」
ジンがずいとバンに顔を寄せる。
「君にとって人の価値なんてそれだけなんだ。LBXで試合して楽しいか。LBXをやっているか。LBXに詳しいか。LBXが強いか。僕じゃなくても良かった。LBXが強いなら、神谷コウスケでも灰原ユウヤでも」
「違う!ジンはジンだし、俺はジンじゃないといけなかったんだ!ジンがいたからユウヤにもコウスケにも勝てた!」
「僕じゃないといけなかった、ね……」
啄ばむように唇を重ねると、バンは大きな目を更に大きくした。
「……な…、なにを…」
「君の中で僕は所詮LBXよりも下なのに、そんなことわかってるのに、僕は君から離れられない」
顔から手を放すと、ジンはバンの上着に触れる。
「ねぇ、バン君。君って僕が留学してから服装変えたんだね」
「へ、う、うん…」
「ねぇ、これは僕を誘ってるのかな?」
ジンはバンの首筋に顔を埋めた。
「ジ、ジン!ちょっと、止め…ひぅ!?」
「バン君からすれば僕も彼も変わらないんだろう。LBXへの情熱、才能。違うのは経験くらいだ。彼は僕の代わりかい?それとも彼も僕も、君にとっては同じ価値しか持ち得ないのかい」
「彼……って…」
「大空ヒロ」
言うが早いかジンは首筋に噛み付いた。
「いっ!」
がり、と嫌な音が耳元で鳴る。鬱血した首筋を眺め、ジンがにやりと笑った。
「いっそ君も僕から離れられないようになってしまえばいい」
「……ばっ…」
嬉しそうに上半身を離すジンにバンが顔を真っ赤に染めて、手探りで枕を引っ掴むとジンに叩きつける。
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