Play Ball

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手にキャッチャーミットをつけて俺はバックネットの前に立つ



目の前には未だに投げさせられる理由も俺の事もわからないという顔をした狩屋が不機嫌そうにマウンドに立っている





「いい?3球だけだからな?その後は止められようとも逃げるからな」



「……わかった」






……何故、


あれだけ凄かったピッチャーがピッチャーを嫌いになってしまったのだろうか



狩屋は俺が今まで見てきたどのピッチャーよりも飛び抜けて上手かった




構えから投げるフォームから球のスピードから……


何もかもが綺麗で……初めて狩屋のピッチングを見た時はスイングをすることも忘れ見惚れていた




俺はもう一度……



狩屋のあのピッチングを見てみたいんだ








「……行くよ」



「あぁ……」







狩屋はそう言って構えに入る





そして――……






「……―――――……!」






――ビュッ


――バシッ








「……はぁ……」




「……―――――」









狩屋のフォームはあの頃から何も変わらなかった



……いや


寧ろ上達しているかもしれない




ボールは狩屋の手から離れたと思ったらいつの間にか俺の構えていたミットの中へと吸い込まれてきた……




構えていた場所……ピッタリに……






「……剣城くん?」



「あ……悪い」





俺は狩屋にボールを返し、再び座る




そして、先程は真ん中に構えていたミットを移動させ、右バッターにとっての『内角低め』という絶妙な場所にミットを構える





――バシッ






……やはり……



予想通りだった……




狩屋はスピードが早いだけじゃない……


コントロールも凄いんだ……





……ようやくわかった……



俺が狩屋からボールが打てなかったのはスピードが早かったからじゃない……



『コースを狙われていた』んだ……





あの時俺が全くと言っていいほど苦手だった『内角低め』に……




俺は再びボールを返す



次でラスト……





「狩屋」


「何?」



「次でラストだが……それ以上投げろとは言わない。だが……話だけは聞かせてくれないか?」


「……なんで」


「お前は凄いピッチャーだ。少なくとも俺はお前ほど凄いピッチャーを見たことがない」


「……そんなのお世辞に決まってる」


「お世辞なんかじゃない!とにかく……話だけ……駄目か?」



「…………」



「狩屋……」





狩屋は俯きながら考え込んだ



少ししてから狩屋が顔をあげる





「……わかった……」


「本当か?」


「ただし、







次の俺のボールが取れたら…だけどね」












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