Play Ball

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俺の通っていた雷門第二小学校の野球部はお世辞にも強いチームとは言えなかった



練習試合でも公式試合でも大体は負けている


寧ろ、勝てばラッキー…と思えてしまうくらい弱い






他のチームに比べて実力が足りなかったのか……、と聞かれるとそうではない



俺達のチームは決して実力やセンスが足りなかったわけじゃないんだ





ただ……


上手くなるために一番必要な物が大きく欠けていた






――『努力』『気持ち』……







この二つが全くと言っていいほど足りなかった





練習は真面目にしない。



負けても何も悔しくない。



練習するくらいなら遊ぼう。







そういう雰囲気の中で野球が行われていた



これで強くなれたら誰も苦労はしないだろう






そのチームの中で、俺だけが真面目に野球をしていた





真面目に練習をし、真面目に声を出し、真面目に自主練習をする





特に家に帰ってからの素振りは毎日欠かさずやっていた




他のチームメイトには何頑張ってるんだ、と笑われる



俺はそれにイラついたが相手にはしなかった



そこで相手にしてしまえば喧嘩になり、野球自体が出来なくなってしまうかもしれないからだ




そんな周りの環境に絶え、毎日コツコツ努力した俺は6年生の頃には4番バッターを任された



努力した者は報われる。まさにその言葉通りだ





そのうち俺に打てない球など無くなっていき、他のチームから高評価を受けるようになった






――雷門第二小は弱いけど4番だけは注意しろ。どんなボールも打ってくるぞ。





他のチームからそう言われるのが堪らず嬉しかった




次第に俺はチームで勝つことより、いかに自分が良いプレイを出来るかを意識するようになった








―――そして、ある公式試合





その日もいつものようにバンバン打って点を取ろう、と気合いをいれていた





だが、


相手のピッチャーから俺は一回も打てなかったのだ―……



ボールがバットにかすりもしない。




結局、その試合で誰も相手のピッチャーのボールを打てなかった






俺は悔しくて泣きそうになったが、グッと涙を堪えて相手のピッチャーを睨み付ける






今でも名前は忘れない、あのときから忘れた事がない








雷門第一小学校野球部エース





『狩屋マサキ』












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