Play Ball

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真夏の太陽が照りつける中、


だだっ広いグラウンドからは様々な声が交差する



9回裏、

ランナー満塁、

点差は1点、



…そして、4番バッター…、





こんな漫画みたいな展開あるのか?

なんて思うだろ?



俺もそう思う




こんな展開夢のようだ、



……ただ、夢と言っても俺には悪夢だ





「絶対打てよ!ここで打たなきゃ4番じゃねーぞ!」

「かっこよく決めろ!」

「ピッチャーに負けるなぁ!」






俺は負けてほしいさ…




俺は今この状態の中、一人マウンドに立つピッチャーなんだから………





そう


俺は守備側で、決して夢のような展開を満喫出来る攻撃側ではないのだ




「お前絶対打てよな!」


「頑張れぇ!」




…と、


聞こえてくるのはバッターへの応援だけ。




同じチームで俺の周りにいる奴は誰一人として俺を元気つけてはくれない




…はぁ……


これだからピッチャーは嫌なんだ




確かにこのピンチの状況を作ったのは紛れもない俺本人、


だけどそんなのしょうがないだろ



全力投球の球をいとも簡単に打たれてしまったのだから




この状況で一番辛いのは誰だ?


そんなの俺に決まっている



ピッチャーやった事無い奴は絶対わからないこの気持ち




こういう辛い時は周りの応援で元気になれるものだよな…





ピッチャーはとても孤独だ



自分で自分は応援出来ない


だから周りからの応援が何よりの救いだというのに



その周りから応援が無かったらもう何にも出来ない







中学生になったらピッチャーなんて止めてやる……!




そう思いながら全力で投げたボールは、バットにいい音をさせて遠くまで飛んでいった








…これが、


俺の小学生最後の試合だった






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