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□*チョコよりも甘く砂糖よりも苦い
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2月14日



世間一般では今日の日を『バレンタインデー』と言う



普通ならば男である俺は女子から貰えるか貰えないかとドキドキする日だ





普通ならば、




だが今年は違う



今年の俺は『渡す』側




恋人である霧野先輩にチョコを用意してきた


恋人であるし、事前にチョコをくれと頼まれたから断られる事は無いだろう



しかしあとは渡すタイミングだ


まぁ朝練は忙しいだろうし…放課後……かな



けど帰りは皆で帰るし渡しづらい


俺と先輩が恋人である事は誰にも言ってないから余計に……




そんな事をモヤモヤ考えているうちに部活が終わってしまった


今部室で渡すのは流石に勇気がいるし、霧野先輩だって……――




「……あれ?」





部室を見回しても霧野先輩の姿が見えない


確かに部活にはいたのだけれど…





「神童先輩、霧野先輩知りませんか?」



「霧野なら教室に忘れ物したから先に帰ってくれって言ってたぞ」



「…そうですか、わかりました」





教室に忘れ物……


それはつまりとてつもないチャンスと言う事ではないか




「天馬くん、ちょっと用事があるから先に帰ってて」


「うんわかったー!じゃあね狩屋!また明日!」

「また明日ー」




俺は机に置いていた鞄を持って部室を出た



早足で二年の教室に向かい霧野先輩のクラスに行く



すると霧野先輩らしき後ろ姿を見つけた


良かった…まだ居た……




「きっ―――……!?」




声をかけようとしたがそれは出来なかった


霧野先輩で見えなかったが霧野先輩の奥に人がいた




確か……あの人二年の……





霧野先輩の同級生と思われる女生徒の手には可愛いピンクの小包




あ……

バレンタインチョコ……か……




「霧野くん……わ、私…霧野くんが好きです…!付き合ってください!」





……わ……



自分が告白されたりしたりする事はあるけど人の告白シーンなんて初めて見た


しかもそれが自分の恋人とは……




霧野先輩がモテる事はずっと前から知っているけど……


やっぱり目にしてしまうと心が痛む……




「……ゴメン…俺、付き合ってる人がいるんだ」



「……え…」






「……――――/////」



…相手の人には悪いが俺は自分の事を言われて少し嬉かった



断ってくれて良かった……




「あ……はい…っあの!せめてチョコだけは……受け取って……くれる……かな?」


「……それなら…」


「あ……ありがとう……」


「いや……こっちこそ……ありがとう」



霧野先輩がそう言ってチョコを受け取る



……まぁ…それくらいなら…いっか………




「それじゃあ私はこれで!」



「(!?…―やばっ!)」





咄嗟に俺はドアから少し離れた所の端にしゃがみこんだ



霧野先輩にチョコをわたした女生徒はフラれたのがショックなのか俺には気づかず走りさっていった




そのあとで霧野先輩が教室から出てくる




「モテモテですね、霧野先輩」


「狩屋……盗み聞きか?趣味が悪いぞ」


「はは……やっぱり?」



「……――帰るぞ」




霧野先輩はしゃがんでいた俺の頭をポンッと優しく叩く





あ……



俺も渡さないと……―――




「霧野先輩、」


「ん?」







「ハッピーバレンタイン」



「……――――」




霧野先輩は少し驚いた顔で俺を見下げる



「……何自分で頼んでおいて驚いてんスか」


「いや……まさか本当に貰えるとは思ってなかったから……」




そう言いつつも霧野先輩は「ありがとう」と言ってチョコを受け取った




……さっきの人にちょっと悪かったかな……







……本当に……――




「俺で良かったのかな……とか、思ってないか?」


「え゛!?」




なんだこの人エスパーか



……まぁ…その通りなんだけど…



さっきの人…

一年の中でも有名な美人の先輩だったし……



「…だって……先輩モテるのに……男の俺なんかで良いのかなって……」



「……ばーか」


「いたっ」




俺が渡したチョコの包みで俺の頭を叩く、しかも角で





「お前じゃないと嫌なんだよ」


「―――!////」




……この先輩は……


よく恥ずかしげもなくそんな恥ずかしい事言えるな……




「だからモテるんですよ」



「は?」


「何でもないです、帰りますよ」


「ちょっ狩屋待てよ!」




俺の後を先輩が一生懸命に追いかけてくる



俺が先輩に気づかれない程度に顔を緩ませてる……なんて、きっと知らないだろうな……







『チョコよりも甘く砂糖よりも苦い』






それは多分、恋の味――……










(「…ちなみに狩屋は貰ったのか?」)

(「まぁそれなりに……」)

(「男から貰ってないだろうな!」)

(「んな訳――…………あ」)

(「貰ったのか!?」)







ハッピーバレンタインデー!

蘭マサに幸あれと毎日思ってます←←

皆さん良いバレンタインを!

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