小説(風吹長編)
□過去と双子
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「…というのが…僕の過去だよ…」
「……」
風丸くんに過去を打ち明けた
何で会ったばかりの人にこんな事話してしまったんだろう
僕は自分の事なのに全然わからなかった
話を聞き終えた風丸くんはずっと黙っている
いきなりこんな話をさせられたら当たり前だよね…
僕の過去を聞いた人は皆そうだ
可哀想…なんて同情の目で僕を見る
確かに家族がいなくなってとても悲しい
けれども僕は不幸とは思った事ない
親戚に可愛がられて、アツヤも戻ってきた
僕は今サッカーをしているし友達ともお喋りして…
そんな状況は不幸なのかな?
ううん。
むしろ幸せな状況だ
「吹雪は今幸せか?」
「へ?」
風丸くんは急にそう言うと、僕の方をジッと見た
「…幸せだよ」
僕はそう言ってお得意の笑顔を見せた
風丸くんは「そっか」と言って、また話を続ける
「正直俺は大切な人を亡くした気持ちはよくわからない。けど吹雪は今幸せで、吹雪の事を好きな奴が沢山いる…それだけできっと大丈夫じゃないかな」
…正直驚いた
同情する人は沢山いた
けれどこんな事を言ってくれた人は初めてだ…
「吹雪には親戚の家族がいる…白恋の仲間、友達がいる…お前の元に戻ってきてくれたアツヤがいる……そして俺達がいる」
──…だから決して1人ぼっちじゃない…
風丸くんにそう言われた僕は思わず涙をこぼした
それを見た風丸くんはあたふたと慌てて僕の心配をしてくれた
「ごっ…ごめん!なんか勝手な事言っちゃって…!!」
「っ…違うの…っ…僕…嬉し…っ…くて…」
初めて僕をわかってくれる人がいた
こうやって元気づけてくれる人がいた
それがとても嬉しくて涙が止まらない
「風丸くん…ありがとう」
「…なんか俺説明下手でゴメンな?途中意味わかんないとことかあったし…」
「ううん…っ…嬉しいよ…そうやって元気づけてくれた人…今までいなかったし…」
「え?」
「何でも無いよ。さ、キャラバンに戻ろうか。風丸くんもそろそろ寝なくちゃね」
「そうだな」
僕達は来た道を戻り、キャラバンに向かう
少しの無言が続いたが、その無言を破ったのは風丸くんだった
「吹雪、話してくれてありがとう」
「─…僕こそ…風丸くんに話して良かったよ」
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