英才の拾い物

□拾い物と記憶の手懸かり
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清正さんたちが長谷堂城に向かってしばらく立つ。そちらに行った妖魔さんたちもまだ帰ってきてない。

鍾会さんは何故だか最近夜更かしをしているらしく朝は寝惚けている。

なので後ろ髪を結ぶのが私の日課になりつつある。この間提案したら寝惚けたままに頼むと言われた。

寝惚けた鍾会さんはどこか素直だ。嬉しいような、怖いような。


「はい、出来ましたよ。」

「ああ…悪いな、礼を言っておく…。」


うつらうつらと船を漕いで呟かれた言葉に慣れてきた私。でもやっぱり、素直で怖い。


「まだ寝ます?今日は何かありますか?」

「何もない…もう少しねる…。」

「起こしますか?」

「いい…自分で起きる…。」

「わかりました。じゃあ今日はおねねさんとこに行きますね。」

「ん…。」


相槌を打った後にじっと目を見られてきょとりとする。

何だろうか、何か用があるのかな?なんて少し首を傾げて問おうかと口を開こうとした瞬間にちゅ、と唇に触れる柔らかい感覚。

問おうと口から出かけた言葉がするっと喉の奥に戻る。


「…な、」

「いってこい。」


寝惚け眼でゆるりと笑んだあとに寝台に倒れ込んだ鍾会さんに絶句。

な、なんだ今の、だって今、所謂接吻というやつを、あれ、なんで、

頭の中でぐるぐると考えを巡らせる最中、鍾会さんは寝息をたてていて。

起こして問うのも悪いか、なんて考えに行き着いてとりあえずおねねさんの部屋に向かった。







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