英才の拾い物

□拾い物と約束
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「…じゃあ、あれは、あのような雑用が、本来は私の仕事だったということか。」

「…そう、なりますねぇ。」


よかった、ちゃんと説明できた。

ほ、と胸を撫で下ろして鍾会さんを見ると、なんだかまだ不服そうな表情をしている。


「…ということは、また呼ばれる可能性があるということか。」

「えっ、あ、そうなんですか?」


わかってないな、とでも言いたげな目で見られる。

う、と言われてもないのに言葉がつまる。


「…あまり、呼ばれても外に行くな。」

「というか私置き手紙しましたよ?」

「どこに」

「ここに」


小さな木の枝を指差すとぱこりとお面で叩かれる。


「見えるわけないだろうこんなの」

「こっ、こんなのって、」

「大体、布巻き付けたくらいで気付くわけがない。」

「酷い!!」


こっ、これでもちゃんと考えたんだぞ、足りない脳味噌全力で使って!!

そりゃ馬鹿だけど!!

そんなことを考えていると不意に鍾会さんが頭に手を置く。

顔を上げようとするとぐっと押さえ付けられる。


「頭、上げるなよ。」

「はい。」

「…心配かけるな。」

「…。」

「…約束しろ。」

「え、」

「私から離れていくな。」


どくり

と心臓が跳ねる。

五月蠅いくらいに、鳴る。

だんだん、体温が上がるような、感覚。

顔が、熱い。

不意に頭から手がゆっくりと離れたのでゆっくりと頭を上げると、真っ赤な顔の鍾会さん。

なんだか恥ずかしくて目を逸らそうにも鍾会さんの視線が動くなとでも言っているようで逸らせない。


「…すごい顔だぞ。」

「鍾会さん、こそ。」


私は何を緊張しているのだろう?

なんだか体が強張って、動かない。


「三毛。」

「っ…はい。」

「…目を閉じろ。」








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