英才の拾い物

□拾い物と約束
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見つけた瞬間に高鳴った鼓動が、その回りを見て違う感覚で高鳴る。


「…三毛。」

「…はい。」

「…なんだこれは。」


自分でも驚くような冷めた声。

それにびくりと三毛の肩が跳ねる。

雰囲気が、強張るのがわかる。

誰も声を出さず、ただ三毛の言葉を待つ。

何故、何も言わない。

何か後ろめたいことでもあるのか。

三毛のそばにいる男と三毛が何か話しているのを少し想像しただけで、何か、腹の奥から黒いものが…


「あ…あのっ!!」

「…っ。」


やっとしぼり出したような声にはっと理性を取り戻す。

しまった、圧力をかけすぎた。

今のは、女の声だ。

焦るままに三毛の手を取り引きずるようにその部屋を出る。

ばれただろうか。いや、まさか。あんな一瞬じゃ誰もわからない。


「あ…の、鍾会さ」

「喋るな!!」

「っ、」


びくり、と繋がれた手から振動が伝わる。

焦っていたせいで大きな声を出してしまった。


「…違う。」

「…え?」

「怒って、ない。…そんなびくびくするな。」

「あ…はい。」


ちらりと見やるとまだ少し強張っている。

はぁ、とため息を吐いて頭をぽん、と撫でる。


「…声だけ、男にしろ。」

「っ、あ…。」

「…部屋に戻るぞ。」


繋がれた手を離そうとすると向こうからぎゅう、と握り返してきて。

致し方ないからこちらも握って足早に部屋を目指した。








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