英才の拾い物
□拾い物とあいさつ
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「おい、出てこい。さらし巻くぞ。」
「うげっ、じゃなくて、鍾会さん着替え終わったんですか。」
「終わった。早く出てこい。」
えーやだーなんて言ってまた布団の中に潜れば鍾会さんに布団を引き剥がされる。
「駄々をこねている場合か。私だって忙しい。はやくしろ。」
「えっ鍾会さん忙しいんですか。」
「おいなんだその失礼な台詞は。」
だって私に構うから暇なんだとばかり…。
口に出しかけて、やめる。
ひどい形相で睨まれた。
「ほら、とっととこちらにこい。」
眉間にしわを寄せたまま自分の目の前を指差す鍾会さんに致し方なく起き上がり、そちらへと行く。
ちぇっ。なんて小さく呟くと鍾会さんが頭を小突いてこの私がやってやるのだから不満そうにするな。と言ってさらしを巻き始める。
「あいたたた、」
「おい、声。」
「あ、はい、気を付けます…っ、」
声を抑えつつ締め付けられる胸にいっそのこと無くなってしまえなどと願い、少しだけ涙目になる。
私こんなんでいいのか…女じゃないでしょそんなこと願う時点で…。
なんて思っていると巻き終わったのか、鍾会さんがぽん、と背中を叩いた。
「終わったぞ三毛。」
「あっ、はい。」
ぱんぱんと胸を叩く。
うん、昨日と同じ、少しの膨らみ。
このくらいなら、確かに筋肉ですって言えば万事解決だよなぁ、なんて改めて思いながらその上に上着を着る。
「さて、私は忙しいからな。お前は此処から動くんじゃないぞ。」
「えっ鍾会さんどこ行くんですか。」
「…お前には関係無いだろう。」
「ええっ、連れてってくれないんですか?」
正直、一人は心許ない。
今日までずっと鍾会さんがそばにいてくれたからか、離れるのはなんだか寂しい。
しょぼん、と項垂れると頭にぽすりと手が乗る。
顔を少しだけ上げようとすると乗っている手に力が入った。
「顔を上げるな!!」
「あっ、はい。」
小さく返事をすると、はぁ、とため息が聞こえる。
「…極力此処に戻るようにする。様子も見に来る。大丈夫だ。何かあったら私を遠慮なく呼べ。…か、勘違いするな、お前に何かあったら厄介なことになるから、仕方なくだぞ。」
少し早口で言われた言葉に頬が緩む。
なんだか嬉しくて、また顔を上げようとするとぐっとさっきより力が入った。
「顔を上げるなと言っただろうが!!」
「あっ、すみません。」
「…返事は?」
「え?」
「二度は言わないぞ!!」
「あっ…はい!!なんかあったら遠慮なく鍾会さんを呼びます!!」
くしゃり、と一回撫でられて、手が放される。
ふ、と頭を上げようとするとまだ上げるな!!と鍾会さんに声がかけられた。
部屋から出る少し前、いいぞ、と聞こえたので頭を上げると出ていく鍾会さんの耳が赤いことに気が付いて、なんだか可愛いな、なんて思ってしまった。
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