英才の拾い物
□拾い物とあいさつ
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「う…ぐぐぐ…朝か…。」
「…っさい…。」
「あっすみませ…。」
目が覚めるときれいな朝日がふりそそぐ。
眩しい、なんて思いながら身を捩りつつ声を出せば私を抱き枕にして寝ている鍾会さんが眉間にしわをよせて唸る。
うるさい、って言いたかったんだろうな、とか冷静に覚醒しかけの頭で考える。
…いや、待て。なんで抱き枕にされてるんだっけ。
確か昨日、寝台でどちらが寝るか話し合いになって、怒鳴りあいになって…結局、二人で寝ることになったのか。
…いやいや、なんで抱き枕に。
寝相?なんか結構幸せそうな顔してるし、さっきの眉間のしわとか、なんだったのってくらいだし。
…起こすか。
「鍾会さん、鍾会さん、起きてください。動けません。」
「…っさいって…言って…。」
「あっごめんなさい。」
謝っちゃったよ。
違う違う。起こさないとだって。
「鍾会さん。起きてくださいな。朝です。」
「…あさ?」
「はい。朝です。」
ゆっくりとまだ覚醒しきってないまどろんだ目を開いてすっぽりと鍾会さんの腕に収まっている私を見る。
「…なんでお前がここにいる。」
「昨日のことを思い出していただけますか。」
「…。」
悩むような仕草をして、ああ、と声を出すとがばっと私を放して起き上がる鍾会さん。
「いや、何故私の腕の中にいる!!!?」
「起きたらこうなってましたけど。」
「な、私が抱き寄せたとでも言うのか!!」
他にどう説明するんです。と落ち着き払って言うと少し顔の赤い鍾会さんが目をそらす。
「私にそんな覚えはない。」
「無意識ですね。」
「っ、」
私だってびっくりしたのだ。私に非はないぞ。
そう思いながら鍾会さんを見ているとはぁ、とため息を吐かれる。
「…今日はそういうことにしといてやる。」
顔を赤いままに寝台をおりて、置いてあった私のお面を私の顔に押し付ける。
ぶっ、と小さく声を出しながらもお面をしっかりつける。
鍾会さんが着替え始めたので、再び布団にくるまった。
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