英才の拾い物
□拾い物の男装
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「起きろこの馬鹿!!」
びしぃっ
「あいたぁっ」
おでこにびしりと激痛。
微睡んで、なんて微塵もなく目を覚まして勢いで起き上がる。
じんじんと痛むおでこを押さえて恨めしそうに、ふんぞり返っている鍾会さんを見る。
「痛いです鍾会さん。」
「おはよう。」
「…おはようございます。」
悪びれもせず挨拶をしてきた鍾会さんに仕方なく返事をする。
するとまじまじと顔や手を見られる。
小さく「やはり…。」と呟いて私の手をとり、またまじまじと見る。
何してるんだろう、と首を傾げているとお前も見ろ、と自分の手を差し出された。
まじまじと見る。我ながら傷ひとつない綺麗な手だ。
…ん?おかしくないか?
「気が付いたか。」
「傷が消えてますね。」
「お前は人間ではないと見るのが妥当だろうな。」
「え。」
突然の言葉に顔をあげると少し嬉しそうに私を見下ろす鍾会さん。
え、何、怖いんですがこの笑顔。
「お前は使える駒だ。」
「はぁ、」
「女だからといって董卓にそう簡単に譲る訳にはいかん。」
「はぁ、ぶっ!!」
べし、と顔に何かが押し付けられる。
驚いて手探りで弄ると、ああ、なんだ、お面か。
顔全体をおおうようにお面がつけられている。これと駒とに何の関係が、なんて思ってたら鍾会さんの口が開いた。
「故にあの豚に女と知られるのは厄介だ。これは四六時中つけておけ。」
「あ、はい。」
「あとは…。」
鍾会さんの視線が私の胸へと動く。
あかんでぇ…嫌な予感しかせんでぇ…。
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