Be quiet!!!!

□わんことにゃんこを拾いました。
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ぽやり。

暖かな縁側。すっかり春である。

土曜の朝。小鳥集まる梅の花。ゆるりと、ひなたぼっこ。

昨日は疲れて早く寝て、随分と早く起きてしまい、することも無く。


「(論文は昨日提出したしなぁ。)」


空を見上げて暇、のひとこと。

ゲームをする気も起きず。

ちちち、と鳴く小鳥がそっとそばに来る。

ああ、それほどまでに気が抜けていただろうか。

いけないなぁ。たるんでるなぁ。

そんなことを考えているとわん、と犬のような鳴き声が聞こえる。

それにぴくりと反応するとそばの小鳥が飛んでゆく。


「・・・?」


珍しい。猫は来ても犬なんて。

野良犬なんてそれこそ、戦時中じゃあるまいし。

それでも比較的近くに聞こえたその鳴き声が気になって、きょろきょろとあたりを見渡す。

またわん、と一吼え。

今のは方向わかったぞ。丁度梅の木の下に黒くうごめく物を発見。

そっと近付くとすり、と寄ってきた。


「おおう、随分と人馴れしているね。」


ひょい、と抱き上げてみると。


「・・・?きみ、前足どうしたの。」


面白いことに前足が紐で結ばれている。おやおや?

虐待かなぁ、ううむ。にしてはまるで人間にするような仕打ちじゃないか。


「首輪・・・してないねぇ。」


飼われている犬じゃない?やっぱりあれか、見るも久しい野良犬か。

それにしてはこの仕打ち、もしや農家から何か拝借したくちかな?

んー、まぁとりあえず。


「きみそれじゃ不便でしょ。取ってあげるよ。」


そっとわんこを縁側に置いてすたすたと家の中に入る。

何がいいかなぁ、けしてほどけないようにも見えなかったし。

でもなぁ、棒で引っ張って無理やりに取ったら逆に痛いかなぁ。

しかしなぁ。鋏で切るにも恐怖心とかあるだろうし何より私が怖いしなぁ。

とりあえず鈎針と鋏を持って縁側に帰還。


「おろ?」


なんかにゃんこ増えてはる。

しかもわんこなんか嫌がってるじゃないですか。え?

近付いて行ってみるとわんこが私の後ろに隠れる。

・・・ええと。


「お知り合い?かな?」


とりあえずにゃんこの隣に座す。

私を挟んでわんこがにゃんこの顔色を窺うようにおすわりした。

そっとにゃんこを窺うとちらり、とこちらを一瞥してまた視線を下げた。

くるくると巻かれている包帯の隙間から見える目がなんだかかわいいなぁ。


「おっと、そうだ、君のそれをなんとかしないとね。」


ふと手に持った鈎針と鋏で思い出す。

ひょいっとまたわんこを抱き上げると膝の上に乗せる。


「うわおも。」


わんこ膝に乗せるとなかなかの重さで。あ、私が非力なのか。

とりあえず鈎針が入る隙間があればなー、なんて結ばれたそこをよく観察。

ぐだりとしていたにゃんこも上体を起こして見て来た。


「ううむ、ここちょっと切ろうかぁ。簡単に解くにはここが邪魔みたい。」


そっと鋏を出すとびくりと震えたわんこ。ごめんよ。


「きみを切るわけじゃないんだから、そんな怖がらないでおくれ。」


私がびくびくしてしまうよ。

ぱちん、と音がして上手く切れた。

鈎針でするするとほどいていく。


「はい、取れた。」


そっと笑って見せると嬉しそう。

なんだか人間みたいに前足を見てる。

にゃんこが嫌そうにはぁ、と息を吐いた。


「そういえばきみも首輪ないねぇ。」


にゃんこも野良かな。

しかしどうして、野良はここによく来るからいいものの飼うとなるとなぁ。

何かを飼ったことなんて、魚くらいしかないしなぁ。

でもこの子達、なんかこのままばいばいするのもなんだか不安なんだよなぁ。

ああ、そうだ。お隣ににゃんこ飼ってた幼馴染がいらっしゃるじゃないですか。

携帯携帯。


「ちょっと待っててね。」


わんことにゃんこに声をかけてわんこを膝から下ろす。

携帯をとりに自室へ。


「お電話お電話。」


ひょいっと携帯を拾ってまた縁側へ。

またわんことにゃんこの間に座る。

えっと。お隣の番号。


「・・・。」


コール1。・・・2。・・・3。・・・


『もしもし?』

「ああ、出た。よかったよかった。私。佐倉の光だよ。」

『ああ光。どしたの。』

「ちょっと先行き不安なわんことにゃんこがやってきたから面倒見ようと思って。」

『え、何それこの間飼い猫を亡くした私への嫌がらせか。』

「なんでやねん。いいからこっち来て。」

『しかたないなー。』


わんこが不安げにこちらを覗き込む。

にゃんこが珍しげに携帯を凝視。

不意に鳴るインターホン。

びくりと震える二匹。


「はぁい。」


するりと立って、玄関まで行き、幼馴染を誘導。


「わ、わんことにゃんこ。」

「そう。」

「へえ。にゃんこは包帯巻かれてるから解るけどなんでわんこ?」

「わんこ前足に紐結ばれとってん。」

「なる。」


とりあえず縁側に座るとにゃんこが腿におっかかってきた。

・・・?後ろ足の動きがぎこちない。

やっぱなんかあんのかぁ。

そんなことを思案しているとわんこの喉を撫でながら幼馴染が話し出す。


「うーんにゃんこフードもう無いしなぁ。卵粥とか食わせてあげればいいんじゃない?」

「適当ですやん。」

「それより前足結ばれてたとかBASARAのクロカンみたいだね。」

「こんなときでもそんな台詞とか尊敬しますな。」

「こっちは包帯まきまきだから大谷さん?」

「わぁお。」


そうきたかぁ、なんて言いながら談笑していたせいで二匹がぴくりと動いたことに気がつかなかったり。


「とりあえず卵粥作ってってよ。」

「あんた相変らず人に頼るのやめなさい。」

「お願い一生のお願い。」

「何回目ですか。」


それでも渋々動いてくれる幼馴染、古池海に私は最大の感謝を。


「折角だしお昼食ってかない?」

「とかいいつつ作ってもらう気満々だなさては。」

「わっばれた。」


したいと思ってる。いつか。









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