MobileVitamin!!
□その12
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「・・・。」
「何だ。」
「い、や、」
付属品でわかっていたことなんだけども。
・・・綺麗だ。所々にある血管の色も、外国人イメージの白い肌・・・人工皮膚も。
マネキンのベタ塗りじゃない。はっきりとした、『生きた人間』の肌の色。
少し触れたらその圧力で変わる色、私がそっと視線を向ければ紅潮する頬。
「(・・・まるで、人間だ。)」
なんだか少し怖くなる。それでもこの中に入っているのは機械だ。
不思議な感覚だ。不思議すぎる。ついひたひたとさっきから触れてしまっている。正直言ってごめん私の携帯。謝る。
だって、でも、肌なんだ、手相とか、体温とか、もう、何から何まで。
また肌から視線を顔に向ける。
なんとも言えない表情で、・・・少し、艶めいた表情で、視線が合わされた。
ぞくり、とした。反射的に、ぱっと手を離す。
プラチナブロンドが揺れた。ルビーのアイカメラも揺れた。少しだけ切なげな表情になった。
「・・・ごめ、んね。入ろうか。」
「・・・いいのか?」
「え?」
「もう、いいのか?」
・・・なんだ、それは。
なんだ、そのもっと触ってもいいんだぞとでも言いたげな目は。
「・・・いいよ。」
「そうか?」
微笑みながら断ると、少しだけ残念そうな顔をした。
なんだか悪いことをしたか?なんて思ったけど、あれ以上まじまじと見てたら、私の中の何かが、携帯を否定してしまいそうで。
「(・・・それは、駄目だ。)」
大切な携帯だ。最近やっと馴染んできたようにも感じてる。そんなことにはなりたくない。
「・・・よし。」
小さく呟いて、携帯が先に入っていった浴場に脱衣所から移動した。
MobileVitamin!!
まるで人間のような携帯真壁。
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