MobileVitamin!!

□その11
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付属品を水面器に入れると携帯は風呂場に先に行ってしまった。

なんだか拗ねているようにも見えたがなんなんだろうか、なんて考えながらとりあえず付属品を洗う。


「普通のシャンプーで大丈夫かな。」

「問題ございませんよ。」

「そっか。」


小さな風呂に満足げな笑みの付属品。

とりあえずそっと頭を洗ってやる。


「人に頭を洗ってもらうと言うのは・・・気持ちのよいものですね・・・。」

「そのために美容室があると思ってるよ私。」


髪を切るのは二の次だよね。

そんなことを言ったらくすくすと笑われた。

不意に少し小さな声で何かが呟かれた。

何?なんて尋ねると、なんでもありませんよ、と笑い混じりに返ってきた。


「流すよ?アイカメラ閉じてー。」

「ふふ、すっかり機械扱いでございますね。」

「やだ?じゃあ、目、瞑ってー。」

「わざわざ言い換えなくても・・・ふふふ。」


失笑した付属品に水面器のお湯をそっとかける。


「ぬるぬるするよね、お湯。我慢してね。」

「はい、大丈夫でございますよ。」


流したシャンプーでぬるぬるするお湯に関しては大丈夫と言った付属品を信じよう。

しかし私なら換えてって言う。

ふと、リンスをする前に、体に目が行った。


「・・・体、さ。」

「はい?」

「・・・綺麗だね。」

「・・・はい?」


正直言って脱いだところから思ってた。

人工皮膚にしては、なんというか。


「・・・本物、みたいで。」


そっと小さな手をとってみる。頬も突付いてみる。

付属品は、きょとんとする。


「・・・うん、綺麗だ。」


科学の進歩を改めて実感した。

人間の進歩は、なんて早いんだろう。

きょとりとしたままの付属品に、私はそっと笑いかけて、少し悲しい気持ちでいた。




MobileVitamin!!




「貴女が洗ってくださっているから、なのでしょうか。」ぽつりと独り言永田。




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