MobileVitamin!!

□その8
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「おはようございます。」

「おはよー朋ちゃん。今日は遅かったね。」

「ん、ちとトラブルった。」

「そ?」


仲のいい同僚に挨拶。上司には目配せ。

こちらには来なくてもいい、みたいな視線で見られて、会釈。

とりあえず、仕事仕事。


「トラブルって?」

「休憩時間に話すわ。」

「わかった。」


聞き分けのいい同僚に、少し頬が緩むのを感じた。


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「で、どうしたの。」

「私の携帯に付属品がついてた。」

「付属品?携帯って、あの翼くん?」

「そ。」


きょとーんっとして同僚は缶コーヒーをすする。

実はその翼くんも付属品も私のポケットに入っているわけだが。

ひょいっとポケットから二機を取り出すと同僚は羨ましげに私を見た。


「あー、いつ見ても美形だわ。で、こっちの黒い美形が付属品さん?」

「うん。modelvitamin-X000、永田智也・・・だったよね。」

「一度で覚えてしまうとは、流石、お一人で翼様の相手をしていただけはありますね。」

「わっええ声。」

「恐縮でございます。」


同僚はなんてところに食いついているんだ。


「それで、聞きたいことがあるんだけど。」

「何でございましょうか。」

「なんで今まで姿を現さなかったの。」

「翼様に止められておりました。」

「?いじめ?」

「違うっ!!」


どう考えてもいじめだろ、なんて思って口に出すと翼が怒鳴った。


「俺だって、早い段階で気付いてなかったみたいだから紹介しようと思った!・・・思った、が、何故か嫌だった。」

「?」

「?」


同僚と二人で首を傾げる。故障じゃないのか?なんだそれは。


「今日、起こすのだって、いつも俺がぎりぎりまで寝かせてるのに、永田が、勝手に・・・。」

「それは別にいいんだけどさ、」

「よくないっ!!昨日だって遅くまで起きてて、俺は、お前を心配してっ、」

「あー、落ち着いて落ち着いて。」


なんだかしょんぼりしている。どうしたんだ私の携帯。

ぽんぽんと軽く頭を叩いてやる。

少しだけ、視線がそらされた。


「あ、わかった翼くん嫉妬だ。」

「「は?」」

「え?だって人工知能付きなんでしょ?おかしくないって。」


いやいやいやいやいや、おかしい。それはおかしい。おかしいと思う。

いくら人工知能が付いてるからって、そんな、嫉妬心まであるだなんて、むしろ自我のようなものまで出来てきてるなんて、普通は考えない。

人間に、そこまで出来るだなんて、私は思ってない。


「・・・。」


翼が黙る。視線をそちらに向ける。

人工皮膚の赤くなった翼がいた。ああもう、なんで赤くなるんだ?血液も通ってないのに、私には不思議でしょうがない。

付属品さんが、小さく笑った気がした。


「なるほど・・・そういうこと、でしたか。」

「・・・なんだ、永田。」

「いいえ?さて、朋さん。」

「はい?」


不意にこちらを向いた付属品さんにきょとりとする。


「私のことは智也でかまいませんので是非そう呼んでください。」

「え、いいの。」

「もち「駄目だっ!!」

「・・・翼?」

「・・・俺が嫌だ。やめろ。」


ああ、偉そうなのが来たぞ来たぞ。

さてどうするか。


「じゃあなんて呼べばいいの。」

「永田。」

「・・・いい?永田。」

「仕方ありませんね・・・かまいませんよ。」


そっと笑った永田にどこか胸騒ぎ。

なんだか行き先不安になってきた私であった。




MobileVitamin!!




嫉妬と気持ちに気付き真壁。




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