MobileVitamin!!

□その3
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「座れたね翼。」

「・・・。」

「見せ所無いね翼。」

「・・・。」

「綺麗な顔が台無しだよ翼。」


席が空いていたところがそんなに納得いかないのか私の携帯よ。

隣でぶすっとしている携帯は腕を組んで足を組んで。

周りからの視線が痛い。まあ、ね。私の携帯美形だもんね。

黄色い声にも気にせずに窓一点を見ている翼。返事をしないので話しかけるのをやめてみる。

視線だけ翼に向けていると遠慮がちに赤い目が、アイカメラがこちらを向いた。


「・・・なんだ。」

「別に。」

「見惚れていたのか?」

「ん・・・ん?まぁ、いいやそれで。」


にやりと笑った携帯に自惚れ屋だなー、なんて思ってふわっと笑いかけてみる。

すると何故か少し赤くなった。なんだそれは。


「・・・やっぱり見るな。」

「は?なんで?」

「うるさい見るな見惚れるな!」

「・・・変なの。」


急に怒った携帯にぽそっと呟いて視線を携帯からはずす。

その直後に降りる駅の名前が告げられた。

電車が停車する。


「降りるよ翼」

「っ、あ、ああ。」


すっと立った私にびくりとしてついてくる携帯。

切符を通して改札を抜けると手をそっと握られる。


「お前の携帯だろう?離すな。」


えっらそうな携帯だよ。本当に。

それに苦笑いを返すと満足そうに微笑んだ。




MobileVitamin!!




見せ所の無い真壁。




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