MobileVitamin!!

□その2
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「翼、翼っ」


携帯を探している。最近買ったミニマムアンドロイド型人工知能付き携帯だ。

modelvitamin-X001、真壁翼。それが私の携帯の名前だ。

出かけるから準備する、そういって充電器のプラグに繋いだままの携帯を放置してたら何故かいなくなっていた。

とりあえず全力捜索。時間が無いわけじゃないけど無駄な時間を過ごしたくは無い。

すると洗面台あたりから声。


「なんだ、うるさいぞ。」


ひょこっと顔を出した携帯にきょとり。

それもそのはず、先ほどまで10cm程度だった携帯がでかくなっているのだから。

・・・これは、180cmはあるぞ。


「・・・どこを探してるんだ。」


そんな携帯は私がベットの下を探していたことに不機嫌な顔になる。

だって、隠れて私が探しているのをほくそえんでるのかと思ってたんだよ私は。

そんな気持ちを視線に含めてみるとふぅ、と溜息を吐いた。


「出かけるんだろう?さっさと立て。」

「え、翼そのまま行くの?」

「何か問題あるのか?」

「・・・充電の消費早いとか、無い?」

「・・・」


あ、視線逸らした。


「・・・翼?」

「All right、ecomodeにもしてある、問題は無い・・・はずだ。」


はずって何だよ、おい、この状態で充電切れたら困るの私だから。


「自信ないなら戻って。」

「嫌だ。」

「あのねぇ・・・。」

「この間触られてただろう!!」

「・・・は?」


触られてた?いつの話だいつの。そして何の話だ。


「・・・電車の、中で。」

「・・・あ。」


ああそうだ、触られてた触られてた。

痴漢ね、そうそう、あったねそんなこと。

でもコート着てたせいかあんまり感覚無かったし人がどんどん乗ってくるからすぐに離れて行ったし全然問題なんてなかったけどな。


「乗るんだろう、電車。」

「うん。電車乗らないといけない場所に行こうとしてるし。」

「・・・俺が守るから、戻さない。」


なんでそこまでしようとしてくれるんだ。君は携帯だろう、私の。

本来大事にしないといけないのは私のほうなのに。

額の辺りに手を当てて、はーっ、と息を吐く。

もうしょうがないか、なんて顔を上げて「じゃあ、行こうか」なんて呆れ顔に言うと綺麗な笑顔が返ってきた。






MobileVitamin!!





おっきくなる真壁。




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