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□友の愛い人の戻し方
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太閤の娘は難しい。理解に欠ける。


「ねぇ吉継」

「如何した」

「もしも父上が亡くなられたら、私はどちらに行けばいいかしら」


姫は徳川と政略による婚姻をしていた。

先ず、どちらに、などと聞く時点でおかしいのだが。

われは思索にふけっており、そこまで考えておらなんだ。

思えばこの時から、全て知っていたのやもしれぬ。


「好きにすればよかろ」


ぼんやりと空を眺めて呟くそれに、考えがない訳ではなかった。

政略による婚姻を果たしておるゆえに、徳川はこちらから離れがたいと考えたのだ。

そして姫も、好いておる訳ではないと、高を括っていた。

ゆえに、太閤の娘は難しい。


「お待ちください、姫!!」

「どうして止めるの」

「殺されるかもしれません、どうか、行かないでください、」


そろりともしもが本当になって、縋る三成に困り顔の姫。

何ゆえに、太閤を殺したあの男の元へ行こうと思うか。

理解ができぬ。なんと難しい。あの男を愛す暇が、あの短い期間であったと申すか。

まさか、そんな。


「姫よ、今一度考え直せ。」

「元はと言えば吉継が好きにしろっていったんじゃない」

「…刑部…?」

「それはもしもの話であろ」


またどうでも良いことは調子良く覚えおって。

眉間にしわをゆるりと寄せるとふわりと姫が微笑む。


「大丈夫よ。殺されたりしないわ。」


全く、その自信はどこから来るのよ。


「あの人は優しいもの。」


…難しい。この笑みを前に引き留める言が見付からぬ。

正直に言えばこれを失うと三成の制御が難しい。

そして三成を祭り上げて兵の士気を上げるより、これを祭り上げて士気を上げる方が断然に良い。

これはそれに慣れている。士気も何を言わずとも上げてくれる。

しかしそれを言ってはいけぬ。それだけは言ってはならぬ。なんとか、良い言を。


「…姫、私は、貴女をずっとお慕いしていたのです、どうか、この三成のために豊臣に…!!」

「…三成…。」


ほろほろと無色の涙が三成の眼から溢れた。ああそうか、そうであった。

利用するようで悪いが、三成は姫が愛いのであったな。そして姫は、優しい。

そうよ、それに漬け込もう。


「姫、三成もこう言うておる。ぬしも見たであろ、太閤を失い悲しむ姿を。」

「…」

「これ以上、三成を悲しませぬためにぬしが必要なのよ。」


必死を装えば、少し悲しげな顔をした。それにゆるりと、くちが笑む。

もう一押しよ。


「ぬしも三成の悲しむ姿は嫌であろ?」


--


やはり太閤の娘は難しい。

結局徳川へと行ってしまった。

あれから三成は機嫌が悪いなんてものではない。手もつけられぬ。

それもこれもあの娘と徳川のせいよ。ああ煩わしい。


「刑部」

「如何した」

「まだ準備は整わないのか。」

「まだよ」


一日何度聞けば気がすむのよ。われはこれでも必死であるぞ。

どうすればあれが戻るか。そこまで考えねば意味もなかろ。

大戦の準備は出来ておる。しかしあれの戻し方がわからぬ。

太閤の娘は、難しい。










友の愛い人の戻し方


(ああ、理解できぬ。まだ時間がかかるか…。)











僕…家康の夢書こうと思ったんですけど…?



2013/05/06

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