短いの2
□鍾会様と悪夢の話
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「…」
「鍾会様?」
「…どれほど寝ていた」
「そんなに寝てませんでしたよ。酷くうなされてましたけど。」
「…ちょっと来い。」
「はい」
招く手に寄っていけばその手がぴとりと頬に触れる。まだ少しだけ眠そうな目が私を見詰めて、眉間に皺が寄った。
「何かありましたか」
「別に…」
すり、と頬の手がそれを撫でる。寝起きの熱を含むその手に目を閉じかける。
「…居るな…」
「ええ、居ますよ」
存在を確かめるような問いかけに、成る程と合点がいく。頬に触れた手に自分の手を重ねれば顔の方が笑んだ。
「生きてるな…」
「生きてますよ」
反対の頬も手が触れて、それも自分の手を重ねる。ゆっくりゆっくりと、顔の距離が近付いていく。
「ここに居るな…?」
「ここに居ますよ。」
何度も繰り返されるそれにくすりと笑う。鼻と鼻が少し触れて、距離は止まる。
「どこにも行くな…」
「行きませんよ。」
重ねていた手で鍾会様の頬を撫でれば。然も愛しげにまた私の頬を撫でる。
「愛してる」
「ふふ、私も鍾会様を愛していますよ。」
測ったかのように同時に動いて唇が触れ合う。まるで時の流れを感じない。それほどに長く、深く、何度も。
「…ふ、そろそろ行くか…」
「休憩になりました?」
「十分だ。」
そっとどちらともなく離れて立ち上がる。問えば頭を撫でられる。
「ああ、鍾会様。髪が」
「ん?」
「少し動かないでください…。…はい、取れた。」
するりと髪についていた葉を取れば随分と素直にありがとうと言った。ああ、気分がいいのか。
「行くか。」
「はい。」
言った直後にきりっとして歩き出すこの様はいつ見ても見事だ。
今日も格好良いですよ。ぽそりと呟けばちらりとこちらを向いて頬を赤くした。
鍾会様と悪夢の話
(そういうことを…お前はっ…!)
(ふふ、すみません、つい。)
やっぱり鍾会さん可愛い
2013/10/27