短いの2
□上官と接吻
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不安の元はこいつ自身。
別に布陣が離れたから拗ねているとかそういうあれじゃない。そんなわけあるか。
むしろ私がいなければこいつは庇わなくてもいい、怪我をする危険も無に等しいのだ。
私の身代わりに生死の境を彷徨ったこいつはすっかり全快した…とは言い難い。
時折顔をしかめるし、無理に笑顔を作る時がある。
それを原因に、怪我を重ねなければいい、のだが。
こいつはわかってるのか、本当に。人が心配する度にアホ面さげてふざけてるんじゃないだろうな。
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せっかく薄れた眉間の皺がまた深く刻まれていく。それに比例してほっぺたをつねる手に力が入っていく。痛い。
「ひょうはいはま。」
「なんだよ」
「いはいれす」
「うるさい」
「いたたたたたた!?」
くっそ、なんなんだ、と涙目になる。ちくしょ。
そのまま見上げるとやっぱり不機嫌な顔。…なんだけど、ちょっと…というか。どこか悲しげな目をしている。
それにきょとりとする。え、なんて馬鹿みたいに素っ頓狂な声も出してしまった。
直後に動けなくなる。ほっぺたをつねっていた手が、いつの間にか添えられるだけになっている。
ぱちぱちと私が瞬きを繰り返す間に何故か距離が縮まっていく。
あ、やばいぞ、なんて脳が働きだした頃にはもう片方の手が私の腰にまわってた。
急展開でついていけないのだけど、変に鼓動が高鳴って前回のお腹の傷が痛くなってきた。くうう。
痛みも相まってか呼吸までもが早くなる。なんか、苦しい。
「…まだ何もしていないのにそんな顔をするな」
まだ!!!!!!!?
まだってなんだ、この上官、何を、
というかこの密着の時点で私いっぱいいっぱい、てか、近付くな!!
しかし身体がうまく動いてくれず腰を捕まれているので私に逃げるすべなどない。うわぁありえないどうしよう。
「まっ…、鍾会様、話あいま…っ」
「ん…」
待てっつっただろうが!!
「…お前の意見など知るか。」
ふざっ…こいつ!!!!
ゆるりと私を解放したと思ったらこの上官ひどいぞおい、
「私の話も聞かない馬鹿の話なんか聞くか。…大怪我して帰ってきたらもっとすごいことするからな。」
びしっ、と指を指されて苦虫を噛み潰したような顔になる。
上官はふんっ、と息を吐いて出ていった。
…とりあえず、もっとすごいことが怖いので怪我は避けるようにしよう。
上官と接吻
鍾会さん→夢主さんは愛情と心配、あと若干の八つ当たり?
夢主さん→鍾会さんは義務的守護と若干の不満。
そんなイメージでした。
夢主さんは前の戦で鍾会さん庇って死にそうな怪我してます。という設定。
それでは読んでいただきありがとうございました。
2013/08/06