短いの2

□上官と私
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「んぐっ、ぎぃいい、」


鍾会様に頼まれて書簡を探しに来て見付けたまではいい。いいんだ。いいんだけども。

高いんだ。位置が。届かないんだ。背伸びをしたり跳び跳ねたりするのだけど駄目だ。諦めようかな。でも怒られそう。

いや、そうっていうか、怒られるな。嫌だな、それは確実に避けたいな。怒ってるの苦手なんだよ、好きじゃないの。

だからなんとしてもこれを取って届けたい。そして素っ気ない反応でもいいからとりあえず怒らせないことを目標にだな!!


「…しかしだな…どうやったらとど…あ、椅子。」


そうだ椅子、私は馬鹿か、とにかく気付いたんだから早くしないと、そろそろ痺れを切らしてやってくるぞ…!!

はやくはやく、なんて逸る気持ちを抑えつつ椅子を動かして昇る。

よし、取れた、これであとは、


「おい!!何時まで待たせるつもっ…!!」

「うえっ!!わっ!!」

「っ、馬鹿!!」


しょっ、鍾会様だとっ、なんて動揺するとついぐらりと安定を失い、やっばいですね、これは、頭から、

とりあえず自分も武人の端くれ、咄嗟に背中を床の方に向けて受け身の準備をする。


「ぐっ、」

「ぐぇっ」


…なんか、鍾会様の声が近くに、あれ?しかも衝撃が思ったより少なかったな、

…ええと、床はこんなに柔らかくなかったよ、ね。

…ええと?


「お前…もっと女らしい声出せないのか…つっ、」

「鍾会様ぁっ!?な、え、すみません、大丈夫ですか!?」


やってしまった、やってしまった、やばいやばい!!とにかく起き上がると鍾会様も上半身起き上がる。

ああもう、怒られること請け合いだよ、書簡は遅れるわ上に落ちちゃうわ、本当に申し訳ない、あああやだやだ、


「お怪我は、」

「この程度でこの私が怪我などするか!」

「あ、ですよね、」


いやでもさっき痛そうに眉間に皺寄せてましたよね、


「…退け。」

「あっすみません、」


さっと立ち上がると鍾会様も立ち上がる。

鍾会様の立ち上がったあとにぴくりと動いた眉間にあ、これはやばい、と冷や汗をかく。


「…本当に、大丈夫ですか?」

「大事ない、気にするな。」

「あ、はい。」


うわあ不安だ。そういう反応逆に不安だ。


「それにしても、何故そんな高所にこの書簡が…おい、間違って無いだろうな」

「あ、はい、間違いはないかと。」

「見せろ。」

「はい。」


持っていた書簡を渡すとまた眉間に皺を寄せる鍾会様。…ええと、間違ってないよね?不安になりますやめてください、

中も確認してふむ、と一息ついた鍾会様に緊張で心の臓がばくばく鳴っている。うわ、間違ってないよね、ないよね?


「間違ってはいないな…誰が動かしたんだ。」


鍾会様の呟くような一言にほっと胸を撫で下ろす。はー、よかった。

にしても場所を把握してるなんて凄いな…あれ?そんな高所にってことはこれの本当の場所って。


「あの、それってもっと低いところにあったんですか?」

「そうだ。大体、この私がお前の届かない位置にあるような書簡を取りにいかせるわけないだろうただでさえお前は危なっかし…、おい、なんだその顔は。」

「…私、そうやって気をつかわせてしまうほど駄目ですかね…。」

「いや別にそこまでは、…まぁ、そうだな。」


なんでそこで本音を出すんですか、酷くないですか。まぁ確かに鍾会様に度々怒られるような酷い輩ですけども。

なんだか上手く動けない自分が今更悔しくなってきてきゅ、と着物を握る。ちくしょう。


「…そう落ち込むより不馴れな分この鍾士季から教われることを光栄に思うべきではないか?…随分と基礎的なことしか教えていない上に全く上達していないがな。」

「鍾会様…後半いらないです…。」

「お前、いつから私の下にいる?もう結構いるだろう。なのになんだこの体たらくは…私ならばこの程度はな、」


…貴方と比べないで欲しいですね…。

というか語りはじめてしまった、執務の方は大丈夫だろうか。痺れを切らして来たってことは急いでいるのでは?とか頭を過ったのだけれど、この上官の話を止めるのは私には無理なのでまた後でなんで気付かせなかったとか、そもそもお前が遅かったからとか、心をべこべこにへこませられるようなお叱りを受けることを覚悟して今は仕方無く話に耳を傾けるのだった。













上官と私

(話なげぇ…何故か鍾会様の生い立ちがはじまり最近の話まできてるのに終わりが見付からない…!!)











鍾会さん語れ

鍾会「さて、読んでくれたこと、礼を言わなくもない。」

普通に言ってください。ありがとうございました!!



2013/07/15

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