短いの2

□偽の密書
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「…間者だったのか?」

「は?」


頼まれた書簡を携え上官司馬懿殿の部屋に入れば不可解な台詞。

わざわざ重い書簡を持ってきた私になんの恨みがあるんだ、なんて思いつつ問われた意図を探る。

私は魏には来たばかりだ。他所の国と関わりもない。

元々流浪の身で、何故か民を助けているところを典韋殿に見られ、こいつらには恩があってどうのこうの言われ。

気が付いたら魏に仕官してた。

魏の事情どころか世間すらも気にせず生きてきた私には荷が重かったが、戦での働きや意外と回転の早い頭で信頼はぐいぐいと得られた。

そして今。なんか疑われてる。

どこかから密書でも届いたか、なんて思ったが、私そんなに名が知れわたってる訳じゃないし。

なんで疑われてるの。私が何をしたの。

一向に返事をしない私にしびれを切らしたのか司馬懿殿がこちらを向く。

眉間に寄った皺が、いつもより深い気がする。

無表情で見返して、どういう意味ですか、なんて問うと。


「…密書が来た。」


案の定である。


「そりゃ、一体誰から。」


言われてもわからないに決まっているけどね。

司馬懿殿のことだって、私はここに仕官するまで知らなかったもの。


「…蜀の、諸葛亮。」


…ああ、司馬懿殿がいつも何か苛々しながら愚痴るあの…。

臥龍…とか呼ばれてる、あの…、いやちょっと待て、私その人会ったことない。

普通には勿論、戦場ですら会ったことないぞ。

戦場でも噂でしか聞いたことない。

そんな人が何故。


「なんで私のこと知ってて、密書を送ってくるんだろう。」

「面識は無いのか?」

「はい、全く。」


ジト目で見られる。本当だってば。


「…ならば、この密書は諸葛亮の策か?にしては解りやすすぎるな。」

「臥龍も大したことないってことで…あ。」

「どうした。」


思い出した。そう言えばその諸葛亮さんの使いの人がこの間来たわ。

ここよりもいい待遇にするから、とか、貴方が必要なのですとか言ってたな、多分。

…使いの人は私が断ったことを伝えなかったのだろうか。

だから密書が来た?なんて笑える話だ。


「おい、どうしたと聞いている。にやにやするな気色悪い。」

「はは、すみません何でもないです。」

「…では、この密書は偽の密書だな。」

「はい。」

「そうか…。」


ほ、と安心したように息をついた司馬懿殿。

それを見ていると。


「…何だ?なにを見ている。もう用はないぞ、書簡を置いて自室に戻れ。」

「はい。」


書簡を置いて踵を返す。

…と、その前に。


「司馬懿殿。」

「ん?」

「私が間者じゃなくて、安心しましたか?」

「っ!!な、自惚れるな馬鹿めがっ!!」


書簡に目を通していた司馬懿殿が顔を上げて怒鳴る。

少し、赤面していて。


「でも、私がここに入ってきた時より眉間の皺が和らいでますよ?」

「な、それは、その…だな。お、お前がいなくなったら多大な兵力損失になるからだ!!」

「そうですか。」


にっこり笑って部屋を出ようとすると、ぼそり、と小さな言葉が聞こえてきて。

その言葉に、こちらも少し、赤面した。








偽の密書


(それだけでは…ないがな。)

(なんであんな小さく呟くかなぁ…。)














というか三國書きすぎだから戦国書きなさい私。

司馬懿「全くだ。」

あとなんで名前書かないかな。司馬懿殿、お前って呼ぶのやめようよ。

司馬懿「私のせいではない。」

うぐぐ…。

司馬懿「お前の文才の無さのせいだ。」

反論できぬわっ…。

司馬懿「まぁとにかく読んでくれたこと礼を言おう。」

ありがとうございました!!



2012/08/04

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