短いの3
□生きる
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※身籠ってます
「大丈夫。大丈夫ですから。」
そんなはずがない。私だって、彼女だって、そんなことはわかっているのだ。けれど言わなきゃならない気がして。気休めでも口を動かさなければならない気がして。
「必ずやこの陳公台が、陳公台がなんとかいたします、」
なんとかなるのだろうか。いや、しなければならないのだ。彼女のお腹には私との新しい命が既に芽吹いているし、この冬をこの山場を乗りきらねばならないのだ。
泣きそうな顔が私を見て、私は精一杯の笑顔で頷く。彼女も少し辛そうな顔で頷いた。ここでは死ねない。
「野望も完成してません、可愛い貴女との我が子も見てません。死ねません。死ねないのです。」
それには策を、と思考を先程から張り巡らせているのになかなか良策が浮かばないのも恨めしいところ。けれどなんとかしなければ。
「呂布殿!!呂布殿は何処か!!」
せめて、せめて軍を立て直さねば、それには呂布殿が居らねば。
なんとかせねば。私が、私がなんとか。
「公台様、」
「、」
小さな小さな蚊の鳴くような声が耳に入る。咄嗟に目の前の彼女に目を向ける。なんて顔色の悪い。
「もう、いいです」
「よくありません、よくありませんぞ、何がよいのです、何もよくありません。」
どうして諦めるのです、そう言って抱き締めれば服が濡れる感覚がして。
「…諦めたくないのでしょう、諦めないでくだされ、私も諦めません。」
「でも、私がいても、」
「貴女がいるから諦めないのです!!そんなことを仰らないでください、居るだけでもよいのです、だから、諦めないでください、」
ぎゅ、と力を込めると弱々しくも向こうも力を込めてくれる。貴女の存在は、貴女が思うよりずっと大きいのです。お腹の子のこともあります。
既に私の一部なのです。野望には貴女が必要なのです。だから、だから。
「生きましょう。生きねばなりません。」
「…はい、公台様」
そっと離れる。それでも手は繋いだままに。
「まずは呂布殿を」
「はい、探しましょう。」
必ずや生きねば。
生きる
(呂布殿はこのような場所で終わる方ではありませぬ)
(生き残りましょう)
すごく…勢いです…
2014/05/08