短いの3

□裏切りも辞しませんよ
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へらり。目の前の顔が笑顔を作る。こちらの口角も、つられるように上がる。

つつ、と汗がこめかみ辺りを伝う。暑いわけではない。むしろ寒い方なのだ。


「惜しいですな。」

「そうですか?」


だったら声をかけてくれればよかったのに。目の前の彼女はそう言った。貴方が好きだから誘ってくだされば何もかも捨てたと平然と続けた。

笑顔が困ったようにゆがんだ。それでもなんて、綺麗な笑顔。


「本当に、言ったらついてきてくださりましたかな?」

「勿論です。」


私の問いにそう答えて武器を構える。私もそっと、兵法簡を構えた。


「強くなったんですよ。おいてかれたから悔しくて。」

「知らぬ間に敵を育てていたとは…いやはや、失念、失念しておりましたな。」


間合いには未だ入っていない。向こうも、こちらも。


「…陳宮殿。」

「なんですかな?」

「…青も好きでしたが、黒も似合いますね。」

「え、っ!!」


そんな台詞を言われるとは思わなかった。しかしてこのような直接的な褒め言葉は…初めて、初めてかもしれませぬな。

その直後に降ってきた武器を受け止めてにやりと笑う。ああ、嬉しいだなんて、おかしな話ですな。


「それで奇をてらったおつもりで?」

「ええ、褒めたのは初めてなので。けれど驚いた顔が見れて満足です。」


にこり。また綺麗な笑みを浮かべた彼女に…こちらはまた、冷や汗が流れる。


「…やはり実に、実に惜しい。」

「そこまで言っていただけると、とても嬉しいです。」


強くなりましたな。押し負けてしまいそうですぞ。

私の部下をしていたころは中の下だったというのに。


「裏切りませぬか?貴女が、欲しくなりました。」

「ああ、やっと聞けた。」


そ、と離れた彼女にきょとりとする。武器を閉まってにこりと、また…。


「もっと早く言ってくだされば、もっと早く共に戦えたのに。」

「…あの、」

「さ、行きましょうか。」


綺麗な笑みで言われた言葉に驚愕する。ようするに、ようするにですぞ?


「…待っていたのですか?」

「勿論。貴方の傍で戦うのが好きなんです、私。」

「…」


また、随分と…。


「思い切りましたなぁ。」

「そうですか?今を後悔したくないので。」


ささ、私を策に組み込んでください。へらり、と先程対面したときのように笑って彼女が言う。

私もそれに呼応するように笑う。ああ、これでまともに、まともに策が使えますな…!!


「参りましょう!!呂布殿の天下のため!!」

「陳宮殿の野望のため!!」

「そこ声高々に言わないでくださいます!?」













裏切りも辞しませんよ

(彼処を潰せばよいのですね!!)
(くれぐれも、くれぐれも目立たぬように…!!聞いておりますかな!!!?)













厄介者増えてんじゃねーかこれ、

2014/04/06

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