短いの2

□ミヤコワスレ
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自然と早くなる足に、郭嘉さんがくすりと笑って私の手を掴む。

早いよ。まだ一日は始まったばかりなのだから。そういって歩幅を合わせさせられる。

それに、でも、なんて言いかけてやめる。そうだねと一言呟いて、掴まれた手を握り返した。

郭嘉さんとお出かけするのは久し振りで。中々無いと言うか、最近はほぼ皆無に近い。

それもその筈、なんだか最近郭嘉さんは急いている。政務でのこととか、とにかく色々。

今回のことも、急だった。これを逃せばこれから先、あるかどうか…なんて言われて、焦りながら予定を空けた。

そんな私をあの言葉は冗談とばかりに笑った郭嘉さんだけど…最近、顔色が悪いようにも見える。

この間、時間が無いとか呟いているのを聞いた。賈クさんにもしかしたら…なんて話もされた。

とにかく不安で仕方ないけどせっかく郭嘉さんがお休み削って誘ってくれたんだ、私も郭嘉さんも楽しめるようにしたい。

ちらりと郭嘉さんを見ると郭嘉さんもこちらを向いた。どうかしたのかな?といつものように優しく笑んでくれた。

それにこちらも笑いかけて、なんでもないと目を前に向ける。そう?なんて声が聞こえた後に髪に何か触れる感触がして咄嗟に顔を上げるとやっぱり笑んでる郭嘉さん。

少し暗い顔をしていたから、つい。なんて言って今度は郭嘉さんが前を向いた。

あれ、今、口付けられたみたい。不意に顔が熱くなって、恥ずかしさが沸いてきた。

俯いてしまった私の耳に郭嘉さんの笑いが届く。やっぱり貴女は可愛らしい。とか恥ずかしい言葉をさらりと吐かれてまた顔が熱くなった。


--


彼女は気付いているのだろうかと考える。私を気遣うことが多くなったから、きっと薄々感付いているのだろう。

時折酷く苦しくなるそれが、今、彼女の目の前で襲ってきたら…私は、巧く誤魔化すことが出来るだろうか。

きっと出来ない…ならば、いっそのこと。

…折角の逢瀬にこんなことを考えて。なんて私らしく無い…。それでも、彼女に心配だけはかけたくない。

ああ、そうだ。それなら、こんなことを考えて沈んでいる場合ではない。


「今日は、特に楽しまないといけないね。」

「…郭嘉さん?」


私の言葉を不審に思ってか彼女が心配そうに私を覗き込んだ。それに微笑んで見せれば彼女も納得いかなげにつられて笑んだ。

…今は今しかない。いつ死ぬかもわからない。この一瞬が、最期になるかも…わからないからね。


--


「愛しているよ。」

「さっきから、どうしたの。」

「…ほら、今言わなきゃ、…貴女に、伝えられなくなる前に。」

「…。」


ああ、やっぱりそうなんだ。そしてこの言葉は、私に、それを、わからせるために。


「今日は…それを、わからせるために?」

「それもある…けれど、一番は貴女の傍にいることだよ。」


笑顔の中に、少しの悲しみ。細めた目は笑みのせいだけど、中には切なさが籠っている。


「少しでも長く、貴女の傍にいたいんだ。」

「…。」

「また忙しなくなる…その前にね。…今日は、夜も付き合ってもらえるかな。」

「っ、」

「貴女と肌を重ねたいんだ…。」


…一日は始まったばかりなのだからと言っていた人とは思えない、それについ、くすりと笑ってしまった。

それに郭嘉さんが少しきょとりとして、笑う。満足げに。

いい笑顔だねと言われて、今日は笑っていようと決めた。














ミヤコワスレ

(これで最後じゃないよね)
(ああ、私もそう願うよ)













ミヤコワスレの花言葉は「また会う日まで」「しばしの別れ」ですけどなんかおもいっきり別れっぽいですね。別れ直前?



2013/09/02

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