ほもいの

□教えてあげる
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はあああ可愛い可愛い僕の師匠兼恋人(仮)。
愛しくて愛しくて辛い、辛すぎる。
何で魔族だっていうのにあんなに可愛いんだろう。

「ピッコロさああん!!」
「…悟飯――かッ!?」

マントをはためかせて、宮殿から下界を見下ろすその後ろ姿に飛びつく。大好きな匂いが僕の鼻腔を擽って、このまま窒息死できたら幸せだろうなあとか思った。

「お前なぁ…歳を重ねる毎に落ち着きが無くなってきてるぞ…!」

背中に突進したのが痛かったのか、ピッコロさんは怒って僕の頭を掴んでマントから引っペがす。ああ、楽園が遠のく。

「ちぇー」
「ガキじゃあるまいし!そろそろその甘え癖も治したらどうだ!」
「甘えてるんじゃないですよー、ただ愛をぶつけてるだけでー」
「だから、俺にはわからんと言っているだろう!」

この僕の胸に溢れる想いを伝えようとこうしてスキンシップを取っているけど、未だに完全に理解してくれたことはない、と思う。
それでもめげない!っていうか、魔族で大魔王とか呼ばれていたのに今ここまで柔らかくなったってことは、その気になれば恋愛感情とかそういうものも学習できると思うんだ!

「そんなピッコロさんに朗報です!」
「…何?」

今まで温めていた計画を実行する時だ。

「僕と一緒に、恋愛について勉強しましょう!」



「……断る」
「恋愛というのはですね、辞書によると特定の異性に特別の愛情を感じて恋い慕うこと。また、男女が互いにそのような感情をもつこと、だそうです」
「断ると言ってるだろう、」
「ピッコロさんは無性という区分なのである意味僕とは異性でもなく同性でもない、つまりこの定義には当てはまらない感じになりますけど、心配ありません」
「話を聞けッ!」
「そもそもそういった特殊な感情というのは、何も異性間だけに発生するものでもなくて、時には同性同士の間にも見られたりするんですよ!」
「わかったもういい!」
「ということはですよ、無性だからといって、それが恋愛を諦める理由にはならない訳ですよ!現に、僕はピッコロさんに対しそういった意味での愛を抱いているんですから!」
「だッ、黙れ!」
「だからピッコロさんも一度自覚してしまえば恋愛ができるかもしれないんですよ!ほら!僕のこと好きでしょう?」
「お前はッ……!」

ああ何て楽しいんだろう。未知の感情に振り回される師匠。ストイックな癖に、僕の言葉でいちいち揺さぶられて、愛やら何やらを押し付けられている時の表情。もう堪らない。
元神様を得体の知れない俗物的な考え方で汚すのが、もう本当に、

「……好きだ、だがそれは、」

堪らなく、愛しい。

「その言葉を貰えれば十分なんですよ!」
「!?」

続く言葉を言う前に、また正面から飛び付いて、強く強く抱きしめる。
僕が教え込んだんだ、要するに処女を奪うみたいな支配欲。事実上ピッコロさんの初恋の人って訳だ。
これを幸せと言わずして何と言う!

「…………ッ、」

愛とかわからないって言ってたのに、この反応。
頬や耳が紫色に染まって、僕はもう満足です。今すぐ萌死ねる!

(今度は僕が師匠!)

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