お題作品

□いつだって君を想ってる
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「はぁ………」

深々溜息を溢す奥州独眼竜伊達政宗を、怪訝そうに振り返るは敵である上田真田幸村に仕える忍、霧隠才蔵。
何故二人が共に居るのかは敢えて割愛。
強いて答えるならば、政宗が才蔵にご執心なのだ。
出雲の巫女姫とはまた違う意味で。

「溜息なんかついてどうした、らしくねぇな風雲児」
「…才蔵よぉ」
「ん?」

膝立ちで縁側で寛いでいた才蔵に近寄って腕を掴んで引き寄せる。抵抗する間もなく、才蔵は政宗の腕の中に収まった。

「…………おい」

抗議の声を上げようと顔を政宗に向けて、しかし叶わなかった。
唇に触れる温もり。
頬にかかる白銀の髪。
状況を理解した才蔵は、顔を真っ赤に染め上げ、固まった。

「………………可愛いなぁお前。真田にゃ勿体ない」

温もりが離れ、吐息が交わる距離で囁かれ、才蔵は真っ赤になったまま戸惑う。もうどうしたらいいのかわからない。
腕の中で狼狽える才蔵が可愛くて仕方ないらしい政宗は上機嫌で、彼の頬や額、瞼に唇など、戯れに口づける。

「…………頼むからその可愛い表情、他の連中に見せんなよ。特に真田の野郎には」

喰われるぜ?俺ン時みたいにな。
抱き締められたまま耳元で囁かれて、思わず擽ったさに身動ぎ、肩口に額を預けた。
今は、見られたくない。
あぁ顔が熱い、理由なんてわかりきっている。

「才蔵」

耳朶に這う唇と、低く甘く名を囁く声に。
あぁ、己はこの男を好いているのか。
頭のどこかで、そう思った。

「愛してる」
「……っ」
「たとえお前が真田の狗だろうが、敵国の忍だろうが譲らねぇ。てめぇは俺のモンだ」

この囁きに抗えるだろうか?
少なくとも、自分には不可能に近いだろう。だって、自分もこの敵国の王に。

「…政宗」
「………ん?」
「すき、だ」

小さな声で聞き取れただろうか?
なんて、聞くまでもないだろう。
そんな、らしくもない嬉しそうに幸せそうに微笑む表情を見れば、答えはいらなかった。




(たとえ離れていても)
(立場が違っても)
(想いは、同じ)



(-------あいしてる)



いつだって。
あなただけを、想っています。

 

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