Novel V

□Thanksgiving
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その時の涙をなお、hydeは忘れられなかった。



その数ヶ月後、彼女は病に倒れた。



次のツアーと、アルバム製作、海外ツアーの構想もあった。

それに加えてソロの動きも決まっていたので、hydeは怒涛の日々を過ごした。


一度だけ、sakuraにお願いして病室へ連れていって貰った。


痩せてしまった体を見たときは、胸が詰まった。

そして震える指先で昔のように髪をまぜられたら、思わず涙を零してしまった。

それに困ったような笑みを浮かべて涙を拭ってくれた手の温もりに、hydeは情け
ないと思いながらも泣き続けてしまった。








「……4年か…」

「…何だか凄く遠い昔のような、ごく最近のような気もするよ」

肩をそびやかすsakuraを眩しげに見上げて、hydeは僅かに口の端を上げた。

「ごめんな、やっちゃん。辛かったん思い出したんちゃうん?」

「…んー…、まぁでも、心構えは出来てたしな。…それなりに一緒の時間を過ご
せたから大丈夫だよ。…たまにはふと、寂しいけど」

最後のほうは、しんみりしてしまいそうな空気を払拭するように少しおどけた口
調を滲ませたsakuraに、hydeも乗っかってやる。


「やっちゃんマザコンやもんなぁ」

「なんだとー!」

わざと取り繕うようにクスクスと二人で肩を揺らしあった後、sakuraはhydeの肩
を抱いた。


「そろそろ行くか?」

肩から広がる温もりに安らかさを覚え、hydeは瞳を伏せ頷いた。








「……本当はな…」


駐車場に止めた車へ戻る途中、道の端に溜まった枯れ葉を横目に見ながら
hydeは呟いた。

「んー?何?」

「……お母さんにごめんなさいって、謝りたかったん…」
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