Novel V
□ピーチボーイ
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「嫌だ」
オレの目の前のソファにでん、と座り込んだhydeははっきりと首を振った。
「…何でっ?」
「嫌なもんは嫌だ」
すっかり板についた標準語で、再びきっぱりと断られ、オレの方も少々むっとする。
「別にいいじゃねぇか」
「嫌だ」
再び振られる首。
「………」
二人の間には一つの桃。
それを挟んで、オレらは先程から睨み合っている。
なんとも誕生日には不似合いな光景である。
…そう、今日はオレの誕生日だ。
本来なら「おめでとう」の言葉と共に、もっと祝福されてもいいはずだ。
「………」
「………」
しばらく無言の睨み合いが続く。
「……分かったよ…」
先に折れたのはオレの方だった。
「桃の皮くらい自分で剥きますよー…」
ちょっとやさぐれた気分で愚痴るように呟く。
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