*イナズマ*
□ *円風でカゲロウデイズパロ
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――8月15日午後12時32分――
とてもよく晴れた日のことだった。昨日は他校との練習試合があったので、珍しく今日の練習は午前中までだった。
練習がそれだけなんてつまらない、午後は鉄塔広場で特訓しようと思い、近くにいた風丸に声をかけたら風丸は二つ返事でOKし、コンビニでお昼を買い公園で食べてから行くことにした。
暑さのせいかそれとも最近この近くに大きな公園ができたせいか、子供の姿が全然見当たらない。
というよりだれ一人いない。
とりあえずベンチにでも座ろうと思ったのだが、この時間帯はベンチがある場所が日向になっているせいか、ベンチがとても熱かった。
それこそ卵を割れば自然と目玉焼きができるぐらいには。
なので俺達は丁度日陰になっていたブランコに腰掛け、そこで昼食をとることにしたんだ。
昼食を食べ終えしばらく涼んでいると、どこからやってきたのか黒いとても綺麗な毛並みをした猫が風丸の膝の上に乗った。
動物好きの風丸は目をきらきらさせて、かわいいかわいいと言いながら膝の上で寝てしまった猫の背中を撫でていた。
俺が暑くないのか?と聞いてもかわいいから、と笑顔で返された。
それから俺達はしばらく他愛のない話をした。
昨日の練習試合がどうとか、テレビの話だとか、この前読んだサッカー雑誌のことだとか、本当によくある話・・・。
話に夢中になりすぎたせいかそれともこの暑さのせいか、俺の首筋をたくさんの汗が流れおちていた。
それにしても暑い。ここは日陰だというのにこんなにも暑いものか・・・。
「あっちーー・・・。」
無意識のうちに言葉が出ていた。俺は服の胸元をつかんでばさばさした。
ふと風丸の方を見てみた。
結ってない部分の髪が首や顔に張り付いていて暑そうだ。
「なぁ、風丸ー」
呼びかけると風丸は、んー?と喉だけで返事をした。
「お前、そんなに髪長くて暑くないのかー?」
風丸は、んーとか、あーとか言い、視線を正面に向けながら答えた。
「まぁ、なれるとそんなに暑くないぜ?髪を結ってる分涼しいんだ」
いや、明らかに前髪は暑いだろうと思ったが、風丸がいいならそれでいいかと思い、ふーんとだけ返事を返した。
「でもまぁ、夏は嫌いかなぁ・・・。」
風丸はぼそりとつぶやくように言った。
「俺は結構夏好きなんだけどなー」
というと、どことなく少しさみしそうな顔をして、そっかと呟いた。
その顔を前にどこかで見たことがあった気がしたけれど、俺はどうしても思い出すことができなかった。
なにかを忘れている気がしてすごく胸のあたりがもやもやする。
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