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□やかせたいもの
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「うっわすっげーwww涼ちゃん見て見て!」



「ちょ、高尾っち引っ張らないでほしいっス!」



俺の手を掴み前進する笑い鳥に苦笑しながらも引き摺られる様に彼の後を追う。
俺らは今4人で水族館へと訪れていた。バスケ馬鹿共が何が悲しくてこんなとこにいるのかと言えば、ただただお互いの彼氏様にやきもちを妬いてほしいという不埒な考えからきている物しかなくて…。
しかしバスケをする上では便利な身長故、いやそれだけではないのだが4人もの大男がいればそりゃ目立つ訳で…。



周囲からの視線が痛い。一応変装してきているので俺がモデルのキセリョ()だとは気付かれていないようだが彼氏様たちにやきもちを妬かせるためにと高尾っちが俺にくっつく度に抑えられた悲鳴が聞こえる。
じっとりとした視線に鳥肌が立つ。しかしそんな女の子達からの視線よりも近くからの殺気だった視線に刺される方が辛い。
高尾っちが俺に触れる度により凶悪な物に変わるその視線は言わずもがな緑間っちが原因な訳でして…。
てかもうこれ作戦成功じゃないっスか?緑間っち確実に高尾っちに妬いてるっスよね?マジ怖いんすけど。誰か助けて。ホントこの人視線だけで人殺せるレベルっスよ…。
なんて考えていれば背後で俺を睨んでいた緑間っちが動き出した。



「おい高尾。ちょっと来い。」



俺らに近づいてきた緑間っちが俺の腕に絡めている高尾っちの腕を掴みつつ言い放つ。
いきなりの事に流石のHSKも対応できずにおろおろしていれば"さっさと帰るのだよ。"と言い高尾っちを引きずって行く。



「ごめん涼ちゃん!埋め合わせは必ずするから!笠松さんもすんません!!」



緑間っちに引きずらながらも俺らに向かい叫ぶ彼の声をなんとなくで聞き流す。
急な出来事に呆気に取られぼーっとしてれば後ろから笠松先輩に声を掛けられた。
その声で我に返り先輩に向き直る。



「…先輩、どうします?俺らだけでも回ります?」



「んー、そうだな…折角だしそうすっか。」



了解っス。そう言い止まっていた足を動かせば先輩は思い出したかの様に言葉を続けた。



「あ、お前今日家に泊ってくだろ?」



「…え?」



突然の言葉に足を止める。
そんな約束してたっけ?
ふと視線を落とし彼の顔を見れば彼はにやりと笑い俺の耳元へと口を近づける。



「散々見せつけやがって…。今夜寝れると思うなよ…?」



「…ふぇ?…え?…は…?」



「おーい黄瀬!置いてくぞー?」



「え、ちょ、待ってくださいっスー!!」



突如爆弾発言を落として言った挙句混乱している俺を置き去りにしてすたすたと水族館内を歩く大好きな彼の後を追う。
俺の顔は確実に赤く染まっているだろう。熱い頬に手を当てふと彼の頼もしい背中を見つめる。
そんな彼の耳も尋常じゃないほど赤くなっていた。
…照れるなら言わなきゃいいじゃないっスか…。
男前な彼氏様のメンツを立てるためにも横に並ばず一歩後ろをついていく。
…これは作戦成功ってことでいいんスかね…?





***



次の日寝不足と腰痛で使い物にならなくなったモデルがその元凶にシバかれるのはまた別の話。





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