*黒バス

□桐皇伊月の可能性についての考察-01-
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"俺、征凛高校に行くことに決めたわ。…バスケはもう…やめる…。"










幼馴染の口からその台詞が発せられてから既に数週間もの日々が過ぎていた。
決して報われる事はないけれど一生懸命共に頑張ってきた3年間とは一体何だったのだろうか…。
毎日毎日それこそ1日も休まずに練習後も自主練を重ね努力していた日々は何だったのだろうか…。
日向にとってバスケなんてその程度のものだったのだろうか…。
中学の3年間を全否定された様な気分だった。
まぁ、実際そんなことはないというのは俺が一番分かっているのだが…。





第一の原因として上げられるのが同年代にいる無冠の五将、そして1つ下の代にいるキセキの世代の存在。
そしてその存在に触れる事すら叶わなかったこと。
俺らの学校はチームメイトにも恵まれず予選敗退。
そのチームメイトが口を揃えて言った言葉は、
"仕方ない"
あぁ、お前らみたいに努力なんてしない者共にはお似合いな言葉だな。
けれど、それを日向の前でだけは言ってほしくなかった。
…なんてのは俺の勝手か…。
でもその言葉を聞いた時よりも顔を歪めていたのは俺らに勝った学校も2回戦負け更にそいつらに勝った奴等も3回戦負け…そして最後には帝光中にダブルスコアで負ける…そんな試合を見に行った時だった。
俺らのやってきた事が一瞬で否定された瞬間だった。





試合が終わり引退後日向がバスケットボールに触れることはなくなった。
まるでバスケをしてきた3年間を全否定するように、バスケに関する全てを拒絶するように…。
でも知っている本当はバスケがしたくて仕方がない事を。





日向順平はバスケが大好きだ。
小学生の頃から俺に付き合ってちょくちょくバスケをしていた時も、中学に入って一緒にバスケ部で頑張っていた時もこれ以上ないってほど楽しそうに笑っていたのだから。
それにバスケが好きじゃない人にあの3Pシュートは打てない。





そんなバスケが大好きな日向だからこそ"高校でリベンジすればいい"と言ってくれるんじゃないかそう思っていた。
しかしそんな最後の希望も数週間前に打ち砕かれてしまった。
…俺はこれからどうすればいいのだろう…。





大好きなバスケを続けたい。
でもそんな大好きなバスケを諦めてでも幼馴染と共に進む、それが今出せる最善の答えだと思う。
バスケは好きだ。それこそ小学生の頃から続けているほどだし…。
けれどバスケは1人でやるスポーツじゃない。
日向と共にするバスケが楽しすぎたのだ。
他に俺の力を日向以上に引き出せる人などいない。そう言いきれるくらいには。
それに鷲の目くらいしか取り柄のない俺を必要とするチームなんていないだろう。
こんなことくらいしかできない俺がレギュラーになれるはずもない。





それに何より今の日向を放っておいてはいけないと思ったんだ。
1人で無理やりにバスケを嫌いになろうとしている幼馴染を放ってはおけない、そう思ったんだ。
でも、俺なんかが一緒にいるだけで日向は少しでも救われるのだろうか。
きっと同じ高校に進んだとしてもバスケを進めることも手を引っ張ってやることも背中を押してやることも出来ないだろう。
何時までもただそこにいる奴。そんなの何の役に立つというのだろうか。
いっそ俺じゃない誰かに任せた方がよっぽど物事がうまくいくのではないか。





そんな考えが頭の中でぐるぐると回り結局何時も最後の決断が下せないでいた。
そんな時に担任の先生から呼び出しがかかった…。








******








呼び出された内容は何と桐皇学園高校バスケ部からのスカウトだった。
桐皇学園と言えば近年各地から優良な選手を集め着々と力を付けており「新鋭の暴君」と呼ばれている有名な学校だ。
どうやらそこの監督さんは俺の唯一の武器の鷲の目を気に入り声を掛けてくれたそうだ。
そして桐皇学園さんは監督の他に主将と思われし人も一緒に来ていた。
監督さんの強い押しと大好きなバスケを続けられること、それに俺の力が必要だと強く言ってくれた主将の今吉さん。
なんとなく決まりかけていた未来はまたブレ始めた。








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