*黒バス

□桜舞う季節に・・・
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母親に一言二言声を掛け家を出る。
春になったとはいえ流石に夜は冷える。
部屋を出る時にパーカーを羽織ってきたのはどうやら正解だったみたいだ。



俺の少しだけ前を歩く伊月の背をただ眺めているのもなと思いふと視線を上に逸らす。
空には少し雲がかかってはいるものの沢山の星が瞬いていた。
そして今こそ雲に隠れて見えないが今夜は満月だったはずだ。雲の隙間からほんの少しだけ漏れている光はいつものそれより少し強い気がした。



視線を伊月に戻してみたがこれといって何を話すでもなくただただ歩く。
目的地なんて知らないしましてやあるのかさえも分からないが、ただふらふらと散歩している風ではなかったのできっと目的地くらいはあるのではないか・・・と考えている内に伊月は足を止めた。




周りを見渡してみると近所の川だった。
土手は満開の時期を少しだけ過ぎた桜で埋め尽くされており足元には微かな桃色の絨毯が出来上がったいた。
舞い散る何枚もの花びらを見てもうそんな季節かなんて考えを巡らせていたらゆっくりと伊月が振り返った。



「ここの桜、毎年綺麗だよね。」



振り返りざまにそう呟くように言った伊月はとても綺麗な笑みを浮かべていた。



「そうだな。」



「俺らが出会ったのもこのぐらいの季節だったよね。日向覚えてる?」



「忘れるわけねーだろ、ダアホ。」



俺が呆れながらもそう返すと伊月はまた微笑んだ。



俺らが出会ったのも仲良くなったのもこんな風に桜が舞い散る季節だった。




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