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□再会ラヴァー(1)
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「お前は、どこにいるんだ? 本当にあの時――――」

 今は遠い宇宙までを見透かすように、アスランは僅かに雲がかかる薄青い空を見上げた。

 あの戦争時、アスラン自身がザフトを裏切ったばかりか、実の父が私怨から私物化し、戦闘を激化させたことが明るみに出た。そのせいで、一方では戦争を収束に導いた英雄の一人と持て囃されながら、もう一方では最大の戦争犯罪者の息子という微妙な位置に立たされた。それはプラントに弓引いた歌姫、ラクスも同じで、戦後は彼女も一緒に、オーブへと亡命する道を選んでいた。

 陣営を同じくしたアークエンジェルと、その乗組員と共に潜伏し、名を変えて、顔を濃い色のゴーグルで隠したアスランは、それから暫くしてカガリの護衛についていた。

 そうして瞬く間に、二年が過ぎて――。





PHASE-00 CE.73


「ミネルバに乗るのか?」
「うん、今日、辞令貰った。叔父さんと一緒だね」

「………」

「心配しないで、大丈夫だよ。それに、叔父さんと一緒にいたいんだ。もう、僕の家族は叔父さんだけなんだしね」

 コーディネーターの中でも、とても優秀な少年だ。他にいくらでも安全な仕事があっただろうに、わざわざ好んで危険な軍艦行きを志願するなんて。

 少年は二年前の大戦で、家族も家も失っていた。それと同時に、己の記憶をみ消してしまっていたのだ。身元不明で入院していた病院で、叔父に発見され、少年は全てを教えられた。けれど悲しみはなかった。当然、涙も出てこない。覚えていないのだから、実感もない。

 家も戦火で失った少年の、存在と過去を証明してくれるはずの写真も私物も、家族と一緒に宇宙の藻屑となって、今もどこかを漂っている。実感のない少年の過去は、叔父が話してくれたことが全てだった。


「今は休戦中だから、大戦の時みたいな激しい戦闘なって、そうそうないだろうし、最新艦のミネルバなら、何かあっても簡単には沈まないでしょ。MSだって一番新しい最新のが乗るし、パイロットまでおニューってのは、ちょっと頼りないけど…赤着てる子なら…大丈夫かな?」

 一人で喋り続ける甥っ子を、叔父は苦笑しながら見詰める。

「それに僕は叔父さんと同じ整備士で、戦闘に出るわけじゃないもん、そんなに危なくないでしょ」

「だが艦が沈めば、死ぬかもしれないぞ」

 少年は、ジッと叔父を見上げるとニコリと微笑む。

「しょうがないよね。その時は、今度こそ運がなかったと思って諦めるよ。どうせ――」

 少年は、その先を続けることなく、どこか遠くを見るような瞳をした。叔父には、その続きがなんとなく想像できたけれど口にはしなかった。

「辞令が下りてしまったなら、仕方ない。くれぐれも、無理はするなよ」

 そうして叔父は、幼い子供にするように少年の頭を撫でた。

「うん、わかってるよ。叔父さんもね」

「ああ――、キラ」


 少年の、少し成長した背を見つめながら、叔父は心に思う。やはり戦場が、あの子を呼ぶのだろうか。

 数日後、少年――と、その叔父マッド・エイブスはミネルバに乗り込んだ。










再会ラヴァー(1)
冒頭より


書き写したものなので誤字脱字はご容赦下さいませm(__)m






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