dream(heavy/sillver)

□すべてには始まりがある
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『ねぇ知ってる?』
『何?』
『カナエさまの話』
『カナ…?知らない』
『何でも自分の願いを叶えてくれる神様で、何でも仕方は…』



「ん…」
―何だ夢か−
私はそう思うと何気なく外を眺めた。
「今頃、みんな仲良く登校しているんだろうなァ…」
病室の窓から見えるのは立ち並ぶ簡素なビル。

私がここに入院したのはほんの一週間前。
今時珍しい栄養失調。
X大学で友達と会話中に突然、あたしは倒れた。
友達や周りの人が私を気遣ってこの病院に運んでくれた。
入院費はみんなが出してくれたらしい。
別に誰かが見舞いに来るわけではない。
小さい頃に父親の暴力と浮気が原因で両親は離婚した。
本当は三人兄妹だけど、一番上の兄は母親を気遣って父親の元に行った。
それから奨学金と母子家庭手当てを貰ったが全く足りない。
あたしが地元の公立高校に通い始めた年の夏―二日間ある球技大会初日。
あたしの姉は死んだ。
元々からあった不眠症の気で姉はよく睡眠薬を飲んでいた。稀に飲酒もしていた。
同時に飲んだのが間違いだったのだ。
死ぬ数時間前まであたしも母も姉の声も姿を聞いていた。
よく分からなかった。
―母親を支えなければならない―
当時はそれで一杯だった。
一人の女として汚れてまで貯金をした。
大学受験が終わり、今の大学に合格が決まった翌々日。
突然、母親が倒れた。
気が動転するも、119番通報した。
しばらく入院したのち、入学式の翌日の朝。
あたしの母は息を引き取った。その時、初めて『世界中であたしは独りぼっち』と思った。
何とかバイトと奨学金で学費を払う毎日。
そんな時だった。
大学入学して初めて出来た友達に『カナエさん』と言う遊びを聞いた時、あたしは倒れた。

午後、検査が終わってすぐ、その友達が来た。
あたしの名前を呼ぶなり、笑顔で
「早く良くなってね―そうだ」と言うとどこからかノートを取り出してきた。
「結愛が休んでいる間の講義、全部取っていたから」
あたしはすぐさま笑顔で
「お、サンキュー」
と言うとそのノートの中を見た。
丁寧な色分けやチェック、普通だったら聞き逃しそうな先生の解説コメントまで―兎に角、綺麗だった。
あたしは只々、驚くばかり。
しばらくその人と話した後、あたしは『カナエさん』という遊びについて聞いた。
するとその友達は、次のように話した。
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