Stories
□あなたのとなりで≪後編≫
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「天王寺さん……私、そろそろ帰らなきゃ」
どちらかというと自分に言い聞かせるように言って、私は立ち上がった。
「ああ……もうそんな時間やな」
天王寺さんも名残惜しそうに、ゆっくりと立ち上がる。
私はこれから新大阪駅に戻って、新幹線に乗って。家に着いたら、21時を回っているだろう。
明日は私は東京で、天王寺さんは大阪で。それぞれの場所で、それぞれの仕事をする。
……またすぐに会えるって、分かってる。
だけど……。
(こういう別れのときって、苦手だな……)
私が何とも言えず俯いていると、
おもむろに、天王寺さんが口を開いた。
「名前。……分かってると思うけど、俺の籍は今でも大阪府警にあんねん」
「……はい」
ドキン……と胸が鳴る。
「今回は断れたけど……いつほんまに大阪に戻ってこいて言われるか、正直分からん」
天王寺さんは大阪府の、私は東京都の地方公務員だ。
天王寺さんの警視庁への出向には、終わりがある。
それがいつかは分かないけど……
天王寺さんが大阪に帰る日が、いつかきっと来るだろう。
「もし、俺が大阪に戻れって言われたら……」
……言われたら?
そうしたら、私は、
私達は……、