Stories

□あなたのとなりで≪後編≫
2ページ/4ページ


「天王寺さん……私、そろそろ帰らなきゃ」

どちらかというと自分に言い聞かせるように言って、私は立ち上がった。

「ああ……もうそんな時間やな」

天王寺さんも名残惜しそうに、ゆっくりと立ち上がる。


私はこれから新大阪駅に戻って、新幹線に乗って。家に着いたら、21時を回っているだろう。
明日は私は東京で、天王寺さんは大阪で。それぞれの場所で、それぞれの仕事をする。

……またすぐに会えるって、分かってる。
だけど……。

(こういう別れのときって、苦手だな……)


私が何とも言えず俯いていると、
おもむろに、天王寺さんが口を開いた。


「名前。……分かってると思うけど、俺の籍は今でも大阪府警にあんねん」
「……はい」

ドキン……と胸が鳴る。

「今回は断れたけど……いつほんまに大阪に戻ってこいて言われるか、正直分からん」


天王寺さんは大阪府の、私は東京都の地方公務員だ。
天王寺さんの警視庁への出向には、終わりがある。

それがいつかは分かないけど……
天王寺さんが大阪に帰る日が、いつかきっと来るだろう。


「もし、俺が大阪に戻れって言われたら……」


……言われたら?


そうしたら、私は、



私達は……、
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ