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□あなたのとなりで≪前編≫
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「あーーーっ私の天むす!!」

横から伸びてきた割り箸が、最後に食べようと思って楽しみに取っておいたプリプリ海老の天むすをさらっていく。

「一個くらいええやんけ!俺かて腹減ってんねん!」

捕らえられたごちそうは、そのまま大きな口に吸い込まれていく。

「あー……」
あからさまに肩を落とす私に、
「お前……どんだけ食い意地張ってんねん……」
まだ口をもぐもぐさせながら、呆れたように言う天王寺さん。

「もう! だから味噌カツ御膳とひつまぶし弁当も買っておこうって言ったんですよ!」

期待していた分だけ、いっそう悲しげにへこむお腹をさする。

「お前なあ、そんな食べたら大阪着いてから何も食べられへんやろ! せっかくいろいろ案内したろ思てんのに……」
「心配しなくても、いくらでも食べられますから!」

私の食欲を甘く見ないで下さい、と言って睨むと、
ほんまにお前の満腹中枢はどないなっとんねん、とぶつぶつ言う。



昨夜奇跡的に名古屋でめぐり逢えた私たちは、駅前のビジネスホテルに泊まり、
今朝は少しゆっくり目に起きた後、お昼前の新幹線に乗った。

私も天王寺さんも、今日は一日オフにしてある。
なんてったって、今日は記念日なのだ。

そのまま名古屋で過ごす選択肢もあったけれど、私が「天王寺さんの育った大阪に行きたい」と言うと、天王寺さんもニカッと笑って「よっしゃ」と言ってくれた。



名古屋から大阪までは、新幹線に乗れば約一時間。

さっき京都を過ぎたところだから、新大阪駅まで、あと10分あまり。

私は、空っぽになったお弁当の紙箱を袋に入れ、目の前の机をパタンと閉じた。
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