燈馬君と可奈ちゃんの日常
□10秒でフィアンセ
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「水原警部、高校を卒業したら、お嬢さんを僕にください! 必ず幸せにします!」
あまりにも突然のことであっけに取られていたお父さんとお母さん。
どうしてこんなことになったかというと、私が燈馬君をいじけさせてしまったからだ。
今日のお昼、繁華街
「ねえ、りょうちゃん、次はどこいこっか? あ、あれ燈馬君? 奇遇だね」
「み、水原さん、こちらの方は?」
「幼なじみのりょうちゃん」
「おっ、可奈にもついに彼氏か! 俺が京都に行っている間にお前もついに男を捕まえたか! 俺もおじさんになるわけだ」
「ち、違うよ! 友達! まあ確かに23にしてはおじさんかな?」
「こいつ!」
「...」
で、燈馬君のマンションに一緒に帰ったんだけれど。
「...僕は友達だったんですか」
「いや、だからね」
「なんで腕組んでたんですか」
「いや、だってりょうちゃんは親戚のお兄ちゃんみたいなものだし」
「男らしい人でしたね。京都の大学で剣道もやってみえたとか言ってましたね。僕よりお似合いかもしれません...」
「と、燈馬君、そんなあ」
てなわけですっかりいじけてしまった燈馬君に「何でもいうこと聞くから許して!」と懇願したわけだ。
そうしたらまさか、こんなことになるなんて...。
「...では、僕と結婚してください」
「へっ、け、けっこん? 結婚? な、もう冗談はよしこさん!」
なんてぼけてみたら、燈馬君、泣き出しちゃったんだ。
「...大切な人を、もう失いたくないんです。お願いです。僕のそばにいてください」
大切な人だったアニーさんの「死」を見てきた燈馬君、そんな燈馬君の気持ちが痛いほどわかって、切なかった。
「ばか、私があんたを見捨てていなくなったりするわけないじゃん。私があんたを裏切ると思う? 絶対に、絶対に、絶対に、絶対にあり得ないよ?」
「わかっています。でも、不安なんです」
「ばか、ばか、ばか」
私は燈馬君を抱きしめた。
こんな泣きじゃくる子供のような燈馬君、見たことがない。
で、それからすぐに私の家にいって、燈馬君が私を嫁にくれと言ったってわけ。てっきり反対されるかと思いきや。
「おおお、そうか、そうか! でかした可奈! いやあこんな頼もしい息子ができて嬉しい限りだ!」
「本当よ! 私男の子も欲しかったのよね〜」
「はいっ!」
こうして燈馬君は、わずか10秒で私のフィアンセになってしまったのだった。
「まあいいけれど。ね?」
「嬉しいなあ!」
「私も、よ」
実に男らしい燈馬君と可奈ちゃん(笑)