08/27の日記

23:17
【みこくろss】卒業とリボンと告白と。
---------------
「あ、あの!御坂様、ご卒業おめでとうございます!」

「うん、ありがとう」

「さ、差し支えなければ、その、リボン頂けませんか…!?」



この手の事を先程から何度言われただろう。

リボンとかボタンとか…。

普段中々近づいてこない子も多いのに、今日で卒業してしまうのが寂しいからなのか。

どうも勇気を出して声を掛けに来た、という子が多い気がする。

ただ、言われるそう言ったお願いは全て断っている。

何故なら。



「ごめんね。そういうのは私はちょっと。貰える子と貰えない子とで差が出来ちゃうしさ。それに…」

((特別かもしれないけど、私があげたいと思える子は…))

「?」

「ううん、何でもない。とにかく、そういう事だから」

「差し出がましい事を言ってしまい、すみませんでした」



謝ってから去っていく。

少し残念そうな顔をしていたように見えたけど、こればっかりはどうしようもないな、と思う。

それにしても。

一番に駆け寄ってきそうな子が来ていない。

周りは沢山の後輩に囲まれていて探そうにもその子達で視界が埋まって上手く探せない。

今、一番会いたいのはあの子なんだけどなぁ。






「はー…」



結局あの子に上手く会えないまま、後輩達に囲まれ続けてようやく落ち着けたのは、寮の部屋に帰ってから。

卒業式を迎えたので、この部屋も数日中には出なければいけないけど、今はまだ、私の部屋。

部屋に帰ってくれば会えると思っていた子はまだ帰ってないらしい。

まだ学校で私を探しているのか、風紀委員の仕事でも入ったか。

そう思いつつベットにのんびりベットに座っていると。



「お姉さま」

「ああ、黒子。おかえり」

「やはりお戻りになられてたんですね。途中急用が出来て少し離れてる間に見失ってしまいましたので」

「それまでは近くにはいたのね」

「はい。…周りに人が多すぎて近づけませんでしたけど」

「そっか」



そこから、しばらくお互い何も言わなかった。

一度自分のベッドに腰掛けた黒子だったけど、そのうち、立ち上がって私の方にやってくる。



「お姉さま」

「ん?」

「ご卒業、おめでとうございますの」

「ありがと」



綺麗な笑顔でそう告げた黒子だったけど、その笑顔には何処か影が見えた。

2年間、ずっと一緒だったから分かる。

卒業を祝っていてくれても、恐らくは、きっと。

でも、それだけはどうにも出来ないから、せめて。



「黒子」

「はい」

「…これ、黒子に貰って欲しい」

「お姉さまの、制服のリボン…」

「うん。無理に使ってくれなくてもいいけど、持っててくれるだけでもいいからさ」

「あの」

「あとさ」



躊躇う黒子の手に、無理矢理そのリボンを持たせた。

取り囲んだ後輩達が欲しがって、それでも差は付けたくないからと断ったリボン。

それは建前でしかなくて。

本当は、黒子にあげたかっただけ。

何ならリボンだけじゃなくて、制服ごと、黒子にあげたいくらいには、黒子を特別に思っているから。

でも、そんな事周りに言えないから、建前で誤魔化してただけ。

リボンを持たせたその手を優しく握って、真っすぐ黒子の顔を見る。



「数日中にはこの部屋を出なきゃいけないし、今のうちに言っておくね」

「?」

「黒子。私は、黒子の事が好き。こうして一緒の部屋で過ごせるのはあと数日だけど、一緒の部屋じゃなくなって帰る場所が違っても、それでも、黒子とこれからもずっと一緒にいたい」

「お姉さま」

「私が卒業して、黒子が今どんな気持ちなのか。きっと、私と一緒だと思うんだ。だから、せめてそのリボン持ってて。一緒にいられなくても、繋がってるって思いたいの」

「…リボン、お受け取りしますの。それと、私も、お姉さまの事、大好きですの」

「付き合ってくれる?」

「もちろんですの。…お姉さま、これ受け取って下さいですの」



戸惑いから驚き、そして、嬉しさへと表情を変えた黒子は。

結んでいたその髪を解いて、髪を結んでいた白いリボンを差し出した。



「黒子?」

「お姉さまが繋がりが欲しいというなら、私も繋がりが欲しくて。もちろん、離れていたって心はずっと繋がっていますの。でも、お姉さまがリボンを持ってて欲しいというなら、私も同じですの」

「…うん、ありがと」



受け取って黒子を優しく抱きしめる。

大人しく腕の中に納まる黒子が愛おしい。

ずっと、こうして一緒に居られたらいいのに。



「お姉さま、確か常盤台の寮を出た後は、高校の寮ではなく、マンションに住むんでしたっけ?」

「うん、そうだけど」

「…黒子が来年、常盤台を卒業してこの寮を出たら…」

「ん?」

「その時は、お姉さまの所にまた押し掛けてもいいですか?」

「…押し掛けるって。ま、でも黒子なら大歓迎よ。というか、私からお願いしたいくらい、かな」

「では、そうさせて頂きますの」

「そうすれば、また一緒に暮らせるね」

「はい、ですの。だから、黒子が卒業するまでの1年間だけ、待ってて下さいですの」

「うん、待ってる」



黒子が卒業したら。

これまでの2年間みたいに、二人で一緒に居られる事を楽しみに。

1年間、黒子が部屋にいない生活を頑張って乗り切ろう。

そして。

1年後、また一緒に。



fin.





『あとがき』

2週間程前に、思いついて書いてTwitterには上げていた短めのお話。
新書ページメーカーってやつで画像化してTwitterには上げたので…そのままこちらには上げ忘れていた模様。
色々捏造してます。
リボンの話やらボタンの話やら。
でも、こういう事があったらいいなって思いました。
あと2作程、まだこちらに上げてなかった短めのお話がありますので、そちらも近いうちに上げます。
(その他、実は2作程アレな内容のお話もまだ未掲載なのですけどもね…)


あ。
しばらく日記書いてませんでしたが、元気でした、はい!
まぁ、特殊な腹痛に一日ダウンしていたり、熱中症になりかけていたのか体調悪くて気分が良くなくて1日ダウンしてた日とかも有りましたが、概ね元気です!

前へ|次へ

コメントを書く
日記を書き直す
この日記を削除

[戻る]



©フォレストページ