とある科学の超電磁砲
□テレポーターコンビの遊園地の過ごし方。
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(黒子視点)
「遊園地、ですの?」
「白井さんが良ければ一緒にどう?」
結標さんと待ち合わせ、喫茶店でお茶を楽しんでいた時。
急に何かのチケットを見せられたと思ったら、そんな事を言われた。
「このチケットはどうしたんですの?」
「知り合いが譲ってくれたのよ。使用期間が決まってるものなんだけど、その日までに行けなくなったからって。チケット一枚で2人まで入れるそうよ」
「なるほど。でも、何故私を誘ったんですの?他に一緒に行きたい方とか」
「んー、最近、白井さんとよく一緒に遊ぶじゃない?だから、この遊園地も白井さんと行きたいなーって」
そういえば結標さんと遊ぶ事も増えたように感じた。
初対面は最悪だったはずなのに。
残骸事件の後、街で偶然結標さんに再会した時の事を思い出す。
お姉さまが用事があった為、一人でのんびりとショッピングを楽しんでいたら、入ったお店の中で彼女と再会した。
傷を負わされ、しばらく車椅子生活だった事は覚えているし、簡単に許せることでもない。
でも、再会した時の彼女は幾分かあの時よりも違って見えた。
何というか、何か吹っ切れたような。
そんな彼女と少し会話を交わしていたら、いつの間にか気を許していた。
その後、喫茶店でお茶をして連絡先を交換し。
たまに一緒にショッピングに出かけたり、こうしてお茶を楽しんだりする程度にはなった。
彼女はあの事件の際、私達が似ていると言っていた。
こうして一緒にいると、何となく、その言葉が分かるような気がした。
「まぁいいですけど。遊園地など、ほとんど行った事がありませんし、折角の機会ですから」
「そう言ってもらえて良かったわ。そうと決まればいつ行くかなんだけど…私はいつでもいいんだけど、白井さんは?風紀委員が休みの日じゃないと行けないわよね?」
「そうですわね…次の週末でしたら非番ですわよ?そのチケット、よく見ればもう期限余り残ってませんし、行けるとすればこの日くらいしかないかと」
「じゃあ次の週末で決定ね。待ち合わせは遊園地の入り口に10時でいいかしら?」
「構いませんわ」
喫茶店でのそんな会話から数日経った週末。
私は少し早めに遊園地に到着した。
滅多に来る事のない遊園地が楽しみだった事もあったが、待ち合わせギリギリに到着して相手を待たせるような事はしたくなかったからだ。
まぁ、とはいえ、相手は結標さん。
待たせたからとそんなに気にする相手ではないでしょうけど。
少しワクワクしながら待っていると、私から遅れる事数分で結標さんが到着した。
「あら、白井さんの方が早かったのね。待ち合わせギリギリのつもりじゃなかったのに…もしかして楽しみで早くから来てたの?」
「いえ、そんなに待ってませんの。精々数分程度ですわ。まぁ、楽しみだった事は否定しませんけど」
「そう。ところで、遊園地でも白井さんは制服なのね」
「常盤台の校則で、休日も制服着用が義務付けられていますから。なので、普段着る機会もないので私服自体ほとんど持ってませんの。って、この話、前にも一度したような気がするのですが」
「…そういえばそうだったわね。セブンスミストにショッピング行った時だったかしら。とりあえず、遊園地の中、入りましょうか」
「そうですわね」
元々学園都市ではそう数の多くない遊園地。
その中でもこの遊園地は人気があるのだろうか、それなりに混んでいるように感じた。
それとも、遊園地というのはこれくらい混んでるのが普通なのだろうか…ほとんど経験のない遊園地なだけに、比較が出来るわけもない。
「結構人が多いわね。とりあえず、何処から回る?」
「結標さんが行きたい所からでいいですわよ?」
「私が行きたい所?私としては、むしろ白井さんが行きたい所からって思ってたんだけど」
そう言われると選ばざるを得ないと思った。
とりあえず、ゲートで貰ったマップを見ることにした。
ジェットコースター、コーヒーカップ、観覧車…色々あって悩んでしまう。
遊園地ほぼ未経験の私にとって、どれもどんなものなのかいまいち分からないから、というのもあるけれど、それよりもどんなものなのかワクワクして選べない。
まぁ、選べないなら近場から行ったらいいかもしれない。
んー、此処から一番近いのは…。
「なら、このジェットコースターにしましょう。此処から近いですし」
「近さで選んだの?まぁいいわ、行きましょうか」
「遊園地自体ほぼ未経験なので、どれを選んでいいのかと。なので近場から行こうと思いましたのよ」
「なるほどね。私も実は遊園地なんてほとんど来る機会なかったのよねぇ…。まぁ、完璧に未体験って訳じゃないし、多少はどんなものかは知っているけれど」
「お互いに新鮮な気持ちで楽しめそうですわね」
「そうね」
話しながらジェットコースターへと向かう。
着いてみたら、それなりに人が並んでいた事にまた驚いた。
遊園地に入った時点で人の多さには驚いたけれど、一つのアトラクションに、こんなに並ぶものなんですのね。
とはいえ、予定を変えるつもりはないので素直に並ぶ。
「結構並んでますのね」
「休日だし、来てる人自体も多いんじゃないかしら」
「なるほど。ところで、これは此処から見えた感じだと、結構上に上がったり下りたりするものなんですのね」
「そうね。昔乗った事あるけど、まぁ楽しいわよ?高い所が怖い人には怖いかもしれないけど。ちなみに白井さんは高い所は?」
「平気ですの。空中テレポートはよくしてますし」
「事件を追ってる時とか?」
「そうですわね」
空中だと障害物を気にせずテレポート出来ますし。
最も、事件の度に空中テレポートしてるというわけでもないけれど。
そういえばと、お姉さまと一緒に犯罪者のヘリコプターを追って空中テレポートしたり、革命未明事件でやっぱりお姉さまと一緒にロボットで宇宙まで行った時も帰りは空中連続テレポートしていた事を思い出す。
「話している間にいつの間にかもうすぐ私達の番ね」
「案外早かったですの」
「それじゃジェットコースター、楽しみましょうか」
「ですわね」
結標さんと並んでジェットコースターに乗り込んだ。
安全バーを下ろしたらゆっくりと動き出して、そのうち上り坂をゆっくりと登って行った。
だんだん高くなる視界には、遊園地で楽しむ人の姿が見えた。
そして、頂上まで来た次の瞬間。
勢いよくジェットコースターが降下した。
「んー、なかなか楽しかったですの!何やら周りで叫んでいる人もたくさんいたようですけど。みなさん、怖いというよりも楽しそうな悲鳴でしたわね」
「ジェットコースターに乗ると叫びたくなる人も多いんじゃないかしら。それはそれとして、中々スリルがあったわね。一回転するなんて」
「一瞬視界が真っ逆さまになってびっくりしましたの」
「さて、次はどこがいい?」
「先程は私が決めましたので、次は結標さんが決めて下さいですの」
私ばかりが決めるというのも不公平だろう。
折角なら、お互いに行きたい所を言う方が楽しめる気がした。
それに、結標さんと一緒なら、どのアトラクションでも楽しめそうだ。
歩きながら、次に行く場所を考えている様子。
そうして、どうやら行くところが思いついたような様子が見えた。
「なら、あれは?お化け屋敷」
「お化け屋敷、ですの?」
「聞いた話じゃ、なかなかスリルのあるお化け屋敷らしいわよ?」
お化け屋敷…。
うーん…これはちょっと悩みますの…。
「えっと…」
「あら?もしかして、意外とお化けとか苦手だったりするの?」
「そ、そんな事ありませんの!お化け屋敷でも何でもこいですの!」
「そう。なら早速行きましょうか」
しまった…。
つい見栄を切ってしまいましたの…。
でも、今更本当はお化けが苦手とは言いだしずらいし…。
腹をくくるしかなさそうだ。
「中は真っ暗ですのね」
「まぁお化け屋敷だし。それよりも、暗いし、はぐれるかもしれないから手繫いでおきましょう?」
「はいですの」
暗い。
何処から突然出てくるか分からないお化けに思わず繋いでいる手が震えそうになる。
これじゃ、きっと結標さんにはお化けが苦手だという事がバレてしまうと思ったが、どうしようもない。
とにかく、早く出口に…。
「…あんな事言っておいて全然平気じゃないじゃないのよ」
「うう、すみませんの…。つい強がってしまいましたけど、こんな事なら最初から素直になってれば良かったですの…」
「スリルがあると聞いていただけあったわね…。結構本格的だったし。…大丈夫?白井さん」
「…もう少し、このままでいさせて下さいですの…」
お化け屋敷の外に出てから、ずっと結標さんに慰められる羽目になっていた。
中では出てくるお化けに驚いて、その度につい結標さんに抱き着いて悲鳴を上げてしまった。
もうお化け屋敷なんて入らない、そう思った。
「もうすぐお昼だけど、ご飯はどうする?多分、何処も多少混んでると思うけど…食べたいものがあるならそこにする?」
「んー、特に希望はありませんので目についた所、とかでもいいですわよ」
「なら、そうね…。あそこにする?そこまで酷く混んでなさそうだし」
「そうですわね、行きましょうか」
お化け屋敷の後、落ち着いてからいくつかアトラクションを回り、昼に差し掛かった為ご飯を食べる事になった。
どのお店がどんな食事があるのかよく分かりませんし、結標さんと一緒なら何でも美味しく食べられそうですの。
そうして、私達は手頃なお店で昼食を済ませた。