とある科学の超電磁砲

□頼って欲しい。
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(美琴視点)



ここ数日、黒子の様子が少しおかしい。

本人は普段通りにしているつもりだろうが、何処か元気がないように見えるし、やつれているようにも見える。

まぁ、恐らく理由は数日前の事が原因だ。




数日前、ジャッジメントが休みだった黒子と二人で出かけていた。

その途中、偶然にも事件に出くわしてしまい、黒子は当たり前のようにジャッジメントとして事件に首を突っ込んだ。

犯人は複数犯だったが、黒子はいつも通り拘束していっていた。

でも、犯人の一人が死角から黒子を狙って飛び出したのを私は見つけた。

黒子は気づいていなかった。

咄嗟に黒子を庇うために飛び出して、黒子を守る事は出来たが、それなりに怪我を負ってしまった。

事件解決後に、黒子は私に悲しそうな表情でずっと誤ってきていた。

大きな怪我ではなかったので、病院で手当てをしてもらい、念のため一日だけ入院させられたが、翌日には退院。

私は黒子を守れて嬉しかったし、その為の怪我なら平気だったんだけど…。

黒子はどうやらそう思わなかったようで、ずっと気にしている。

元気がないのはそのせいだろう。




事件から数日。

夜中に小さな声が聞こえてふと目が覚めた。

隣のベッドからの声。

気になって様子を見てみる。



「…っ!ぃや…!」

「黒子!?」



随分と魘されている。

何でこんなに魘されて…。



「黒子、黒子!起きて!」

「…ぅぁっ!……っは」

「大丈夫?」



必死で体を揺すり、黒子を起こすと。

黒子は大きく息を吐きだした。

その目からは涙が溢れかけていた。





「…はぁ…はぁ…」

「凄く魘されてたけど…嫌な夢でも見た?」

「…お姉さま…?起こしてしまいましたか?」



魘されていたというのに私の事を気遣おうとするんだからこの子はほんとにもう…。

こんな時くらい、気遣わなくったっていいのに。

私の前では決して弱い所を見せようとしないのよね、黒子は。



「私の事は気にしないで。そんな今にも泣きそうな顔して…辛い時は頼ってくれていいのよ?」

「お姉さま……お姉さまぁぁぁぁ…」



涙を隠すかのようにぎゅっと抱き着いてくる黒子。

いつもなら抱き着いてきたら引き剥がすところだけれど、こんな弱った黒子を放っておけないし、何より頼ってきてくれた事が嬉しい。

だから、優しく抱きしめ返して、そっとその背中を撫でてやった。

弱さを滅多に見せないこの子が少しでも泣けるように。



「うぇええええええええええええん」

「泣きたいだけ泣いていいから。大丈夫、黒子が落ち着くまでこうしててあげる」



それからしばらく黒子は泣き続けた。

私はただただ、そんな黒子を抱きしめたまま、泣きじゃくる黒子を見守っていた。

そうして、たくさん泣いて少し落ち着いた頃。

黒子は少しずつ、その涙の理由を話してくれた。



「この間、お姉さまがわたくしを庇って怪我をなさったでしょう?私のせいでお姉さまが怪我をされて、黒子は未熟さを感じておりましたの」

「そんなの気にしなくていいのに」

「そうしているうちに、お姉さまがやはりわたくしのせいで怪我を負ってしまう夢を見るようになりましたの…。それが日を追うごとにどんどん悪化して…大怪我をされたり、わたくしの目の前からいなくなってしまったりしていたんですの…」

「黒子…」



この間の怪我が原因で元気がなくなっているのではないかとは思っていた。

でも、立て続けにそんな夢に魘されていたなんて。

やつれていたように見えたのは、魘されてよく眠れていなかったから。

そしてきっと、ただでさえ私の怪我を自分のせいにして責任を感じていただろうに、そんな夢を見て余計に負い目を感じてしまっていたから。

気づいてあげられなかった。

もっと早く気づいてあげる事が出来ていれば、ここまで追い詰められる事もなかったかもしれないのに。

すごく悔しい。



「もしそんな事が現実に起こってしまったら…。そんなの黒子は耐えられませんの。でも、現にお姉さまはわたくしを庇って怪我を負ってしまった…いつこの悪夢が現実になってもおかしくないんじゃないかって、気が気じゃなくて…」

「私が黒子を庇ったのは、黒子に怪我をしてほしくなかったから。私がそうしたくてしたんだから、私の怪我は黒子のせいじゃない。そりゃ怪我する事もあるかもしれないけどさ、私は黒子の傍からいなくなるつもりなんてこれっぽっちもないわよ。だから、安心しなさい?」

「お姉さま…でも…」



さっきあれだけ泣いて、不安な顔をしながらも少し落ち着いていたのに、また泣きそうになってる。

大丈夫だって言ってるのにこの子はもう…。

安心させたくて、もう一度しっかりと黒子を抱きしめて、頭を撫でる。

この子にもう、これ以上思い詰めてほしくない。



「大丈夫。どんな事があっても、私はアンタを置いてったりしないから。一人になんて、絶対させない。何があったって、私は黒子の隣にいる」

「お姉さまああああああ…」

「…ごめんね、こんなに辛くなってしまう前に気づいてあげられなくて。黒子の元気がなくなってるのは気づいてたんだけどさ。聞いてもきっとはぐらかされちゃうかな、と思って私もあまり踏み込まなかったから…。ずっと、辛かったんでしょ?」

「辛かったですの…苦しかったですの…気にしない方がいいのではとも考えましたけど、ふとした瞬間に考えてしまって…一度考えてしまうと止まらなくて…どうする事も出来なくて…どうしたらいいのか分からなくて…」



泣きじゃくる黒子を抱きしめながら、決意する。

もうこの子にこんな顔をさせたくない、させない。

不安になんてさせない。

この子にはいつも笑顔でいて欲しい。

それからしばらくの間、黒子が泣き止むまで、私は優しく黒子を抱きしめて背中や頭を撫で続けていた。



「落ち着いた?」

「はい…。情けない所を見せてしまって申し訳ありませんの…」

「気にしなくていいの。黒子はいつも頑張ってるんだから、こういう時位ちょっと弱い所見せたっていいじゃない。ね?」

「お姉さま…」

「今夜は一緒に寝てあげるわ。私と一緒なら、悪い夢も見ないんじゃない?」

「でも…」

「ほら、もうちょっとそっち寄ってくれる?」



少し戸惑ってる黒子を少しだけ壁側に行かせて、黒子のベッドの布団の中に入り込む。

きっと、二人で一緒にいれば少しでもいい夢が見れるはず。

最近よく眠れていないこの子に、少しでも安心して眠って欲しい。

そんな想いを込めて、隣にいる黒子を抱き締めると、遠慮がちに私の服を握り締めてくる黒子。



「このままぎゅってしていてあげるから、もう寝なさい?それともまだ不安?」

「…正直、不安はありますが…お姉さまがいて下さるので。お姉さまと一緒ならきっと大丈夫ですの。…ありがとうございますの、お姉さま」

「私は黒子が笑顔でいてくれたらそれだけでいいの。だから、何かあったら今日みたいにいつでも私に頼りなさい?」

「はいですの」



先程まで不安そうな顔をしていた黒子が控えめだけどようやく笑顔を見せてくれる。

少しは安心出来たって思っていいのかな。

そんな黒子を抱き締めたまま、優しく背中をトントンと叩いてあげると、そんなに時間が経たない内に黒子は眠りに落ちていった。



「おやすみ、黒子」



眠ってしまった黒子を起こさないように小さく呟いて。

抱き締めた黒子の暖かさをその身に感じながら、私もいつしか眠りについた。




fin.
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