偏った書庫
□Hard way to Heaven
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今日の対局に対する簡単な取材と、個人指導碁と…。
何か乾杯用のワインでも買ってかえるか。
好事、魔多し。
もう取材が始まってもいい時間だが始まらない。
前の奴が押してるんだ。
長々と自慢話なんかしてる奴は誰だ。今日は早く帰りたいんだよ。
イライラして増える煙草を揉み消して、立ち上がった。
ちょっと様子を見に行って、睨みきかしてやれば早く切り上げるだろ。
出版部の一角、いつも棋士にインタビューをしている間仕切りの奥。
「すいません、もう開始時間をだいぶ過ぎてますが…。」
「あっ、緒方先生!すいません、終り次第お呼びしますから…」
ちょっと顔を出して声をかけると、まだ配属されたばかりだろう若くて落ち着きのない奴が飛び出してきた。
「この後も予定があるから、なるべく早くしてくれないか。」
「はい、それは分かっています…」
ペコペコ動く頭の向こうに俺を待たせてる野郎がいる。
「今は誰の取材なんだ?」
「あっ緒方先生…!」
「人の取材に割り込むとは失礼じゃないのかね、緒方くん」
…この声は…。