偏った書庫
□現在、過去、そして。
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「…虫干しを兼ねて、ちょっと出しておくか。」
「そうですね。」
たまたま今日は塔矢家にいたのも何かの縁だろう。
今年は俺とアキラで人形を出してやることにした。
「確かここに…、あ、あった。」
大きな押し入れから大きな箱をよたよたと担ぎ出す。
「これ一つか?」
「いいえ、あと二箱…雛壇は別ですし。」
「雛人形を飾るのって重労働なんだな…。」
甘くみていた。
「さ、緒方さん早くやりますよ!」
「はいはい。」
めいめい箱を抱えて部屋へ運ぶ。
それほど重くはないのだが、箱がやたらとがさばる。
「ア、アキラ…前が見えない…。」
「何言ってるんですか、しっかり運んで下さい。」
段々とアキラが明子さんに見えてきた…。