偏った書庫

□温度
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寒い寒いって、そんな生っ白い手足を出して寝るからだろう。
と、ワイシャツにフルレングスのパンツを纏った俺は思う。

「悪かったよ。」
本を置いて向き直り、隣にスペースを空けて腕を背もたれへ掛ける。
いかにも心地良さそうに、いつもと同じようにその場所を用意する。

「…また誤魔化そうとしてるんですか?」
「そんなことないよ。こっちの方が、あったかいと思うけど?」
「…〜っ!」

いかにも悔しそうな声を漏らして、しばし逡巡。


「仕方ないですね…。」
でも結局は隣に座ってしまうアキラに、俺は少し自惚れてしまうのだ。

「いらっしゃい」
肩に手を回した。ひんやりと冷えた綺麗な黒髪が心地いい。

「もう、その勝ち誇った顔が嫌なんです。」
そういいつつ、ひんやりとした肌の感触はしっかりと伝わってくる。
冷えたから、なんていうのはお互い口実だと知りながら。
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