偏った書庫
□さくらさくら
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春の柔らかな陽が窓から広がって行く。
もう外には気怠いような、心地よいような、
「春」の雰囲気が立ちこめていて。
僕はそれを、棋院の窓枠から眺めていた。
体に注ぐ陽は優しいけれど、ただそれだけでは少し淋しい。
お昼の休憩時間になったら、少し外に出てみようかな。
お昼ご飯も外で食べて…。
明るい陽の下に出ようか。
部屋の角に蟠る小さな暗闇を振り返ってそう思った。
今日の催しは思ったより人出が少なくて、早く抜けられた。
皆やっぱりこの陽気に誘われて、外へ出かけてしまったのかな。