偏った書庫
□紫陽花
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首にへばり付く髪を厭いながら空を見上げた。
纏わり着くようなじっとりとした空気や、
うっとおしい熱気は確かにこの時節特有のものではあるが。
今年はこの時候に不可欠な「雨」が降らない。
雨が好きなわけでは無いが、
雨の無い六月と言うのもまた腑に落ちないものである。
はっきりしない梅雨に、道端で紫陽花も同じ顔をしていた。
「こんなに暑いばっかりじゃ、疲れちゃうよね…」
まだ…、と言うか、もう、と言うか。六月も半ば。
なんとなく紫陽花の花は色褪せてしまった様に見える。
「やっぱり、雨が少ないからかな…」
確かに、先日雨は降ったけれど、
嵐の雨じゃ駄目なんだ…。
今年は雨の中に佇む紫陽花を見ていない様に思う。