偏った書庫

□温度
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「緒方さん、もう少し上げて下さい。」

「何を?」

「何を、じゃないです!なんですかこの寒さは!」

ピッ、ピッと言う電子音。低く唸りながら落ちてゆく回転数。

「おい、何するんだよ。」
「冷やし過ぎです!何ですか16度って!」
「涼しいだろ?」
「ほんっと不健康!」

叩きつけられたリモコンには几帳面に“28度”と表示されていた。アキラらしい。
これって冷房の意味があるのか、俺にはさっぱりわからない。
二酸化炭素がどうのって言うなら、まず最初に一般家庭なんかよりも大きく削れるところがあると思うが。

「ウチには魚もいるんだぞ?水温が上がると死ぬ。」
「こんなに寒くしなくたって平気ですよ!僕が先に死んじゃいます。」

昼寝用のブランケットを体に巻き付けて、不機嫌な顔で俺を睨む。
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